最新記事

音楽

「ポップスの到達点」とまで評されるビヨンセ、今も究極の歌姫に君臨し続ける

The Key to Beyoncé’s Success

2021年10月02日(土)14時54分
シャアン・サチデブ
ビヨンセ

2013年スーパーボウルでは圧巻のパフォーマンスを披露 KEVIN MAZURーWIREIMAGE/GETTY IMAGES

<ビヨンセは「マイケルの正統な後継者」であり、究極のアスリート。人種もジェンダーも超えた熱狂を、40歳の今も生み出す理由とは>

まだ新型コロナウイルスの影も形もなかった2018年8月、米ニュージャージー州のメットライフスタジアムは最高に盛り上がっていた。観客は約5万人。白人よりも黒人やヒスパニックが、ストレートよりもゲイが多かった。

ステージでは汗だくのビヨンセが「マイン」「ベイビー・ボーイ」「ホールド・アップ」「カウントダウン」の4曲を続けて一気に歌い上げた。並みの歌手なら、間違いなく息が上がってしまう。

でもビヨンセは違う。会場を埋めるファンたちの覚悟も違った。事前に彼女のダンスをしっかり覚え、そっくりまねするつもりでいた。1曲につき6回、「歌って!」と命じるビヨンセの号令に従う準備もOK。感極まって涙があふれ、正直、息も切れる。ばてないのは、主役のビヨンセだけだ。

今は亡きプリンスについての刺激的なエッセーで、作家ヒルトン・アルスはこう書いていた。「男として企業社会の駆け引きに加わる」と決めたとき、プリンスはブラッククイーン(黒人LGBTQ)の支持を失った、と。

そうかもしれない。でもビヨンセは最初から企業社会の中にいた。最初から保守的で、異性愛で主流派。そして資本主義万歳。だから問題ない。みんなそれを承知でビヨンセを信じている。だから彼女の政治も偽善も関係ない。映画で稼ぎ、ファッションブランドで稼いで何が悪い?

この9月で40歳になったビヨンセは既に「生けるレガシー」の資格十分だが、まだ進化を続けている。

ミレニアル世代には、キラ星のごとく輝くポップの女王たちがたくさんいる。例えばリアーナやレディー・ガガ、ブリトニー・スピアーズ、さらにアリアナ・グランデやケイティ・ペリーがいる。もちろんマライア・キャリーやジェニファー・ロペスやマドンナもいる。

足から血が出るまで練習する

ビヨンセは彼女たちとどう違うのか。音楽ライターのジョディ・ローゼンはビヨンセを「100年以上続くポップスの必然的な到達点」と呼んだが、それはなぜか。答えは彼女のライブを見れば分かる。

巨大スタジアムを満員にするコンサートは、ローマ教皇の盛大なミサに似ている。なにしろ10万の目と耳を魅了しなければならない。その重責に耐えられず、感情的に不安定になり、平凡なパフォーマンスに終わる歌手もいる。

だがビヨンセは違う。歌姫よりもプロのアスリートに近い猛烈な鍛錬を極め、足から血が出るまで練習する。彼女は現時点で最も身体能力の高いスーパースターだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    ハン・ガンのノーベル文学賞受賞はなぜ革新的なのか?…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:独占取材 カンボジア国際詐欺

特集:独占取材 カンボジア国際詐欺

2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影