進歩派なようで実は差別的な構造に執着...リアルすぎる大学教授たちの世界
A Chair Reviews The Chair
ジユンは、若手の有望株で唯一の黒人女性教員であるヤスミン(ナナ・メンサー)に終身在職権を与えようとする。しかし、さまざまな難題が降り掛かり、対応に忙殺される。
大学当局からの風当たりが強まっている高齢の白人教授たち(履修する学生が少ないのに給料が高い)のプライドも守らなくてはならない。その上、上層部からは、入学者をもっと呼び込めないなら、教員のリストラを行うよう圧力をかけられている。
ジユンは、友人であり学科の同僚でもあるビル(ジェイ・デュプラス)にも悩まされる。ビルはほかの誰よりもジユンを応援しているが、ジユンの改革をぶち壊しかねない大失態をしでかす。ファシズムに関する講義でナチス式敬礼を披露し、その様子を撮影された動画が拡散されたことで、大問題に発展してしまうのだ。
『ザ・チェア』は、ドラマでの大学教員の描かれ方に強い関心を抱く私たちのような視聴者にそっぽを向かれないようにしつつ、マニアックな描写に終始して一般視聴者を置いてきぼりにしないように、絶妙なバランスを取っている。
大学教員の多くが人格的な欠陥を持っていて、病的なまでに自己中心的だという現実もしっかり描かれている。研究者としての輝きを失いつつあるベテラン教授のエリオット(ボブ・バラバン)や、長年にわたり教授会で「紅一点」の存在だったことにより被った精神的苦痛に今もさいなまれている年長の女性教授ジョーン(ホランド・テイラー)の描写もリアリティーがある。
「時限爆弾を押し付けられた気分」
このドラマの最大の強みは、大学の学科長の日常を正確に、皮肉交じりに表現していることだ。少なくとも学科長としての私の経験に照らして言えば、その描写はやや誇張があるにせよ、間違っていない。
学科長は、教授陣のプライドを傷つけないよう細心の注意を払い、研究室のスペースについて交渉し、いくつもの会議を駆け回らなくてはならない。それに、上層部からの予算面での締め付けに対処し、スタッフの昇進とつなぎ留めに奔走し、寄付者や大学評議員たちの気まぐれに振り回される羽目になる。
私がこのドラマで最も共感したセリフは、ジユンが学科長としての苦しい立場について語った言葉だ。「誰かに時限爆弾を押し付けられた気分がする。ちょうど爆発するところで、女性が爆弾を手にするようにしたのではないかと思えてくる」