『ブラック・ウィドウ』は、マーベル映画で新機軸の大ヒット作となる予感
A Rare Marvel Female Superhero
姉妹役を演じるヨハンソン(左)とピュー(右)の絡みも見どころ MARVEL STUDIOSーSLATE
<スカーレット・ヨハンソンとフローレンス・ピューの演技が生む化学反応は、マッチョなマーベルの新しい「顔」になれる>
『ブラック・ウィドウ』は、アメリカンコミックを原作とするマーベル作品に無関心な人にもおすすめしたい作品。映画館の大画面とコミックブックのスーパーヒーローは相性がいいことを改めて示せそうな、意外な秀作だ。
主人公のブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフは、高度な訓練を受けた超一流の暗殺者から正義のヒーローへと転身した人物。しかし、激戦の後には鎮痛剤が必要なナイーブな一面も持ち合わせている。マーベル作品の中から、これほど人間味のあるキャラクターを拾い上げたことが、そもそも新鮮だ。
主演のスカーレット・ヨハンソンは、マーベル作品では自分のキャラクターが脇役に追いやられ、時には「アベンジャーズ」の男性ヒーローから欲望の対象にされる性差別を問題視したことがある。だがナターシャと妹のエレーナ(フローレンス・ピュー)を中心に据え、どちらのキャラクターにもロマンチックな要素のかけらも見せない本作に、そんな批判は当てはまらない。
1995年の米オハイオ州を舞台にした冒頭部分では、姉妹の生い立ちが描かれる。エバー・アンダーソンが演じる幼年時代のナターシャは、並木道を自転車で走って母と妹が待つ家に帰る。だが平穏な空気は、父アレクセイ(デビッド・ハーバー)が帰宅した瞬間に一変する。ある脅威から逃れるため、一家はすぐに逃げなくてはならなかった。
マーベル映画では異色の脚本と演出
21年後。大人になったナターシャは、ノルウェーの田舎で連邦捜査官のチームから身を隠していた。ソコビア協定なるものに違反し、連邦政府とアベンジャーズの両方から反感を買っていた。
彼女は1人でトレーラーハウスに住み、トラブルに巻き込まれないようにしていたが、あるとき橋の上でハイテク装備に身を包んだ男に襲われる。そこから妹がまだ生きており、ハンガリーに住んでいる証拠をつかみ、再会する。
映画の核心となる、あまり幸せとは言えない家族の再会は、通常のマーベル映画よりもドラマチックかつコミカルで、何とも言えない感情表現をもって演じられる。
通常、アベンジャーズのプライベートな生活は、宇宙を救うための激しい戦闘の合間にわずかに見られるだけ。だが本作では、家族の物語が悪役の陰謀に組み込まれている。
作品の後半部分では、ナターシャら機能不全家族が4人そろって、悪のドレイコフに立ち向かう。頭脳と戦闘能力の両方で主導権を握っているのは、女性だ。