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イスラム版『セックス・アンド・ザ・シティ』の新鮮さと衝撃度

A New Look at Muslim Women

2021年06月24日(木)17時41分
ロクサーナ・ハダディ
ドラマ『ウィ・アー・レディー・パーツ』

ロンドンが舞台の音楽コメディー番組『ウィ・アー・レディー・パーツ』は全てが新鮮 LAURA RADFORD/PEACOCKーSLATE

<異色のバンドを描く英国発ドラマは、ムスリム女性の生きる喜びと信仰を両立させる画期的な作品>

こんなドラマを想像してほしい。人種も民族も社会的地位も性的指向も違う5人の女性が、固い友情で結ばれる。互いの恋の相手も恥ずかしい過去も知る5人は一緒に料理し、ショッピングに行き、けんかをしては仲直り──。

思い浮かぶのは『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』か『Lの世界』、あるいは『私の「初めて」日記』だろうか。新番組『ウィ・アー・レディー・パーツ』の罰当たりなのに敬虔で、騒々しくも賢いムスリム女性5人組を連想する人はまだ少ないだろう。

5人のルーツは東南アジア、中東にアフリカとばらばらで、ある人は全身にタトゥーを入れ、ある人はヒジャブで髪を覆っている。だが世間が押し付けるステレオタイプや思い込みを嫌というほど意識しているのは、皆同じだ。

音楽コメディー『ウィ・アー・レディー・パーツ』はイギリス発でロンドンが舞台。パキスタン系のニダ・マンズールが脚本を書いて監督し、チャンネル4で放映された。

中心となるパンクバンド「レディー・パーツ(女性器の意)」のメンバー4人とマネジャーは政治談議に花を咲かせ、ダブルデートに出掛ける。1台の車にぎゅう詰めになってザ・プロクレイマーズの「アイム・ゴナ・ビー(500マイルズ)」を合唱するシーンは、『ウェインズ・ワールド』を彷彿させる。

そんな5人を見ていると、こちらまで楽しくなる。バンドの練習を中断して礼拝を行うときも、ムスリム男性のヒゲの是非を論じるときも、一緒にいるときの彼女たちは実に生き生きとしているのだ。

信仰は自己実現を後押しする

バンドを成功させようとする5人の奮闘を描きつつ、ドラマは信仰が自己実現を阻むのではなく、むしろ後押しする点を強調する。

伝統と進歩を融合する意図は、最初から明確。それを端的に表すのが、マネジャーのモムタズ(ルーシー・ショートハウス)の初登場シーンだ。

彼女はおしゃれなブルカに身を包んで練習室に現れたかと思うと、マリフアナたばこを手にメンバーのいさかいを一言で収める。「大事なのはフェミニズムだよね」

ボーカルのサイラ(サラ・カミラ・インピー)とベースのビスマ(フェイス・オモーレ)、ドラムのアイーシャ(ジュリエット・モタメド)は、ギタリストを募集している。外の世界では女性とムスリムに対する無自覚な差別にうんざりする毎日だ。

バンドの前に現れたアミナ(アンジャナ・バサン)は微生物学の博士号取得を目指す学生で、とても有望なギタリスト候補には思えない。極度の上がり症だし、ムスリム向けのデートアプリを使って熱烈婚活中なのだ。

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