話す力を鍛えるアメリカの学校教育
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<話し下手で苦い思いをした経験のある人は少なくないでしょう。実際は、話す力は訓練によって誰でも習得できる技術です。アメリカで行われている方法をご紹介しましょう>
日本の学校では「話す力」を生徒に指導することはほとんどありません。日本で生まれ育てば、わざわざ授業で話し方を教えなくても、ごく自然に「話す力」が身につくと考えられているのかもしれません。
しかしJTBが行なった調査(2018年)では「複数の人の前で発表することが苦手」が75%、「初めて会う人と話すことが苦手」が63%、「自分の意見を口に出して話すことが苦手」が57%と、大多数の社会人が「話すこと」に何らかの苦手意識を持っていることが分かっています。
話す力の良し悪しは性格によるもの、すなわち社交的な人は話し上手で内向的な人は話し下手、と思っている人が多いですが、実際には、話す力は訓練によって誰でも習得できる技術です。
幼稚園から人前で話す経験を積ませる
話す力はコミュニケーションを円滑にし、ミスコミュニケーションを減らし、良い人間関係を構築する基本的生活スキルです。社会に出た時に役立つ「実用的な技能の育成」を重視するアメリカの学校教育では、話す力の育成が幼稚園から高校まで系統的に行なわれています。
幼稚園(アメリカの幼稚園は小学校入学前の1年間のみ)では、自分の好きな物をクラスメートに紹介する「ショウ・アンド・テル/Show and Tell」が定番です。生徒はクラスメートの前に立ち、自分の好きな物を見せながら、なぜそれが好きなのか、決められた時間内でおもしろおかしく説明します。
たとえば、お気に入りのぬいぐるみを持っていき、それを見せながら「名前はミッキーです。4歳の誕生日におばあちゃんからもらいました。ふわふわで可愛いからいつも一緒に寝ています」と、ぬいぐるみにまつわるエピソードを紹介します。「ショウ・アンド・テル」の目的は、人前で緊張せず、堂々と話をする経験を積ませることです。
小学生になると「プレゼンテーション」を通して「分かりやすく説明する技術」を学んでいきます。たとえば社会の授業では「ジョージ・ワシントンについて」というテーマでプレゼンテーションをさせます。生徒は独自にリサーチを行い、パワーポイントを使ってプレゼンしたり、ジョージワシントンに扮して本人になりきってスピーチをしたり、歌や詩を作ったりと個性を発揮して自由に発表することで分かりやすく伝える技術を身につけていきます。
小学高学年からは「スピーチ」を学びます。自分で書き上げた原稿を暗記して、身振り手振りを加えながら、クラスメートの前でスピーチをします。生徒や先生が審査員となって、スピーチの内容、声の出し方、話すスピードや間合い、ジェスチャー・目線・表情の使い方などを審査し、競い合わせる学校もあります。