女性の活躍を妨げる「ガラスの天井」を破るのは、男性の仕事だ
MEN’S ROLE IN GENDER EQUALITY
「誰にとっても有効なEVP(従業員価値提案)を作成し、キャンベルで働く価値を示さなければならなかった」と、コナントは語る。包摂性や公平性に対する従業員の意識は低く、また2万人余りの従業員に会社が期待をかけ、投資する用意があることを知らしめる必要もあった。
間もなくキャンベルスープでは「ウィメン・オブ・キャンベル」を皮切りに、性別、人種、性的指向など同じ特質を持つメンバーで構成される従業員リソースグループ(ERG)が立ち上げられた。
「最初は10人ほどだったウィメン・オブ・キャンベルに、1年で世界中から5000人の女性が参加した」と、コナントは言う。「扉を開き、女性の活用は業績向上につながるという考え方を後押しするだけで流れが変わった」
コナントは女性リーダーの育成も買って出た。11年、彼の後を継いでデニス・モリソンがCEOに就任。キャンベル初の女性トップとなったモリソンを、コナントは何年も前から教え導いていた。
「参謀的な役割のグローバル最高顧客責任者として雇い、それから損益に責任を持つポストに就けた」と、彼は振り返る。「モリソンは6〜7年かけて実務でも実力を証明し、取締役会が後継者を検討する頃には貢献も経験も折り紙付きだった」
現状の打破で男性も恩恵を受ける
取締役会は女性のCEO候補がいないと嘆きがちだが、問題が解消できることはコナントの例が示している。強力な地位にある男性が、女性のために扉を開けばいいのだ。
男性の協力は女性の活躍を阻む慣習や常識を変えるのに欠かせないだけでなく、現状を打破すれば男性も恩恵を受ける。女性に不利なヒエラルキーは、男性にとっても落とし穴になるからだ。
男性の言動には厳しい規範があり、守らなければ罰を受ける。隙を見せたり気さくに振る舞ったり、感情(怒りを除く)をあらわにしたりすれば批判を招く。このような言動はむしろ信頼関係を育み、仕事の成果を高めるのだが(わざわざコーチを雇って習得する幹部もいるほどだ)、実際にそうした男性は能力も好感度も低いと見なされる。
規範から逸脱するのが最も難しく、代償が大きいのは育児における役割だろう。社内では男女格差が男性の出世に味方するかもしれないが、人生全般においては違う。
扉を開く人々 前任者の薫陶を受けてキャンベルスープ初の女性CEOに就任したモリソン