女性の活躍を妨げる「ガラスの天井」を破るのは、男性の仕事だ
MEN’S ROLE IN GENDER EQUALITY
84年の米大統領選で、民主党の大統領候補ウォルター・モンデールは、ジェラルディン・フェラーロ下院議員(当時)を初の女性副大統領候補に指名した。その背景には、連邦下院議長とニューヨーク州とオハイオ州の知事、ニューヨーク市長(全員男性)の「副大統領候補は女性に」という強い声があった。
フェラーロがアメリカで最高レベルの地位に推挙されたのは、長年の女性たちの積極的な運動だけでなく、権力の座にある男性たちによる応援の結果でもあったのだ。この構図は現在も重要な意味を持つ。
2020年の米大統領選で、ジョー・バイデン(現大統領)は、早い段階から女性を副大統領候補に指名する意向を示していた。そして実際にカマラ・ハリス上院議員(当時)を選び、最終的に当選を果たした。ハリスは女性としても非白人としても、初の副大統領だ。
「男性パネリストのみ」はNG
フランシス・コリンズ米国立衛生研究所(NIH)所長は19年、科学関連の会議で「パネリストが男性のみという伝統に終止符を打つ」ことを呼び掛けるとともに、インクルーシビティー(包摂性)が欠けた会議の講演依頼は拒否すると表明した。後にコリンズは、#MeToo運動の影響で、生物医学の領域でも、女性科学者が平等な機会と待遇を得る環境づくりが急務だという認識が広がっていると、ニューヨーク・タイムズ(NYT)に語った。
これは非常に重要だったと、プリンストン大学のヤエル・ニブ教授(神経科学)は語る。「主催者はみんな、聴衆を呼べるコリンズを招きたがる。そういう人が『会議登壇者の構成が適切ではないから、基調講演は引き受けない』と言えば、巨大なインパクトを与えられる」
男性の声が非常に重要なのはほかでもなく、「彼らが男だから」だ。男性が男女格差や性差別に対して声を上げれば、共に平等を目指す頼もしい仲間だとみられる。さらにそうした男性は、男女の不平等が特殊な関心事ではなくみんなの問題だという意識を高め、普及させる。
私たちは女性の昇進を支援した多くの男性に話を聞いた。食品大手キャンベルスープのCEOだったダグラス・コナントもその1人。01年、経営難に陥っていたキャンベルの舵取りを任されたコナントは、女性の登用(および広い意味での多様性の拡大)を再建戦略の中核に据えた。
扉を開く人々 NIHのコリンズ所長は機会均等を訴え、登壇者の構成が偏った催しでの講演を拒否