この春花粉症デビューした人は要注意 リンゴやトマトでもアレルギー反応出るかも
この試験ではリンゴを23種に絞り込み、アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)の強さにより低、中、高の3グループに分けた。リンゴアレルギーをもつ被験者52人は、最初に低アレルゲングループのリンゴで皮膚テストを行った。小さく切ったリンゴを両腕の皮膚に置いて様子を見て、皮膚が赤くなるほどアレルギー反応が激しいことがわかるテストだ。その後はリンゴを少量から丸ごと1個に至るまで徐々に量を増やして食べていった。さらに、中、高のアレルゲングループのリンゴで同じことを繰り返した。
そしてシラカンバの花粉の時期を迎え、被験者全員の目のかゆみやくしゃみといった症状はいつもより軽く済んだ。昨夏からは被験者を100人に増やして、2回目の試験を行っているという。
リンゴの経口免疫療法の確立には時間がかかるかもしれないが、確立すれば、一部の花粉症患者には朗報になる。
昔からあるリンゴ種は、アレルギーが出にくい
ドイツ語圏では、治療ではないが、リンゴアレルギーの人がリンゴを生で食べるときのヒントも公開されている。
バイエルン放送によると、リンゴアレルギーがそれほど強くない場合は、古くからあるリンゴの品種を試せるという。一方、ゴールデンデリシャス、ガラ、ジョナゴールドなど新しい品種は不向きだ。新しい品種はより甘くなるよう改良されていて、抗酸化作用が高いポリフェノールの量が極度に少なくなっていることから、アレルゲン量が非常に多く含まれる傾向にある。
ドイツの市民団体の1つ、ドイツ環境自然保護連盟(BUND)では、どのリンゴがアレルギーを引き起こしやすいかそうでないかのリストを作成し、公表している。リストの黄色はアレルギー反応の人が多かった品種、緑色は無反応の人が多かった品種で、アレルギーを起こしにくい品種が多数あることがわかる。
このリストにはないが、スイスでは、レッドムーン、レッドラブ、キサベル、バヤマリサといった品種もアレルギーを起こしにくいと紹介されている。
リンゴを生で食べるときの2つ目の注意は、新鮮であることだ。長く保存されるほど、リンゴ内のタンパク質がどんどん増えるのだという。3つ目の注意は皮をむくことだ。ほとんどのタンパク質が皮の真下にあるそうだ。
アレルギーがとくに出にくいリンゴはこれ!
リンゴアレルギーの人のためのリンゴといわれる品種もある。オランダ生まれのサンタナがその1つだ。農業分野の大学ランキングで世界1位のワーゲニンゲン大学の研究者たちが、サンタナには、アレルギーを引き起こす2つのタンパク質のうち1つの含有量が低いことを発見した。サンタナは古くからある品種であまり知られていないという(バイエルン放送)。
ドイツで最近誕生したグレーフィンゴールドバッハと黄色いゾネングランツも、リンゴアレルギーの人たちのための特別の品種だ。
スイスでもアレルギーを起こさないリンゴの開発は進められている。しかし、2つの品種を掛け合わせるだけで機械的にタンパク質が少なくなるということはなく、新品種の開発は難しいという。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com