最新記事

冒険

北極圏で超ハードな「隔離生活」を送る女性2人(と1匹)のクレイジーなジャーニー

ARCTIC WONDER WOMEN

2021年04月17日(土)11時54分
キャスリーン・レリハン(トラベルライター)
ハーツ・イン・ジ・アイスのソルビーとストローム

世界から完全に隔離された生活を続けたソルビーとストロームと犬 COURTESY OF HEARTS IN THE ICE

<過酷な高緯度北極スバールバル諸島で、初の女性だけの越冬に成功した2人。「隔離生活」の目的は、気候変動の実態を世界に発信すること>

わずか20平方メートルのワンルームに女2人きり、外の世界からは完全に隔離され、太陽もめったに拝めない日々を過ごす......。えっ、この冬は自分もそうだったって?

でも彼女たちの場合、外の世界にいる脅威は新型コロナウイルスではない。生き延びるために必要なのはマスクでもない。ソーシャルディスタンスを守らない隣人に対処するには赤外線ナイトビジョンスコープや発煙筒、ゴム弾銃が必要だ。

私たちは今もウイルスの蔓延する世界で孤独と長い夜に耐えているけれど、彼女たちの無節操な隣人の正体が、巨大なホッキョクグマだというのはちょっと想像しにくい。

2人の不屈の女性ヒルデ・ファルン・ストロームとスニバ・ソルビーの暮らしは、新型コロナの隔離生活のスーパーハード版だ。2人はノルウェーのスバールバル諸島(世界最北端の群島で北緯78度の北極圏にある)に陣取り、文明から隔絶された環境で合計16カ月(実に1万時間以上!)を過ごしてきた。2人が暮らす猟師小屋には電気も水道もない。最も近い文明の地までは140キロもある。何かの罰ではない。全ては2人が自ら選んだことだ。

ソルビーとストロームは、世界で最も過酷な気象条件の北極圏高緯度地方で、1人の男の手も借りずに越冬に成功した世界初の女性チームだ(一緒に越冬した犬もメス)。スバールバルで冬を越した女性は過去にもいるが、必ず男性が共にいた。

しかし冒険だけが彼女たちの目的ではなかった。2019~20年の初めての越冬も、20~21年の冬に再び極地へ戻ったのも、越冬すること自体が目的ではなかった。2人にはずっと大きな目的がある。

「私たちが極地に戻ったのは、そうすれば発信力がずっと強くなると感じたから。地球規模の問題に注意を喚起したいから、私たちはこの極限の地に来た」。ソルビーはスバールバルの小屋から衛星電話で、本誌にそう語った。

2人のプロジェクト「ハーツ・イン・ジ・アイス」で、人為的な気候変動の影響が最も深刻な極地への注目が高まったのは間違いない。世界最北の群島であるスバールバルは、地球上で最も温暖化の進行が速い場所でもある。NASAと米国雪氷データセンターによると、昨年11月にはスバールバルで同月としては観測史上最高となる9.4度を記録。昨年の海氷域も観測史上2番目に小さい面積にまで後退している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    メーガン妃とヘンリー王子の「単独行動」が波紋を呼ぶ

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 5

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 4

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

  • 5

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること