北極圏で超ハードな「隔離生活」を送る女性2人(と1匹)のクレイジーなジャーニー
ARCTIC WONDER WOMEN
気候変動の最前線であるスバールバルから見える未来は、どうにも暗くて悲しい。平均気温は上がる一方だし、氷も解ける一方。鳥たちは海中のマイクロプラスチックごみを食べて死に、ホッキョクグマはなかなか餌を見つけられない。
「北極圏では、他の地域に比べて2倍の速さであらゆる変化が進んでいる。気候変動は世界中で起きているが、北極では変化が速く、その影響は誰が見ても分かる」とストロームは言い、こう続けた。「北極には世界の未来が映っている。気温上昇の速度は、よそより4倍も速い」
極地の劇的な変化を体験
ソルビーとストロームはどちらも50代。北極や南極で25年以上の観測経験があり、人為的な地球温暖化による劇的な変化を自分の目で確認してきた。北極の高緯度地方に滞在して「市民科学者」として活動する資格は十分にある。
ノルウェー人のストロームはスバールバル諸島のロングイェールビーンに住み、厳しい状況下の北極遠征を何度も経験し、ホッキョクグマとも300回以上遭遇している。ソルビーはカナダ国籍だがノルウェーのトンスベルグ生まれ。スキーでグリーンランドと南極大陸を走破した最初のカナダ人女性でもある。
2人は16年にアラスカで開催されたアドベンチャー・トラベル業界の国際大会で出会い、互いに極地での過酷な体験に基づく特別な絆があることに気付いた。
ソルビーは南極大陸で、重さ90キロのソリを引きながら67日かけて1127キロの氷原を走破した。それは彼女にとって最も厳しい遠征であっただけでなく、心に重くのしかかる経験でもあった。
「極地での冒険に挑み始めてから25年近くなるけれど、この間に北極や南極で目撃したひどい変化を思うと心が痛む」と、ソルビーは言う。「私たちはずっと、この世界がひどい気温の変化や異常気象に見舞われ、多くの人が避難を強いられるのを目の当たりにしてきた。だから、自分もできることをしたいと思った」