演劇経験者は「学力」が向上し、自己肯定感も高い
写真はイメージ Richard Lewisohn-iStock
<演劇経験者は、未経験者に比べて英語(読解力)のスコアが平均65ポイント高く、算数のスコアが平均34ポイント高い──台本を読む作業は、想像力や感性を磨きながら読解力を向上させ、学力の土台づくりに役立ちます。>
皆さんは「演劇」にどのような印象を持っていますか?「文化部の代表」「地味」「個性的な人が多い」など、あまりポジティブな印象を抱かない人が多いかもしれません。日本ではまだ地位が確立されていない演劇ですが、欧米では子どもの教育に役立つ優れたツールとして演劇は広く認知されています。
演劇を学ぶとコミュニケーション力が高まる
イギリスの学校では演劇が必修科目になっていることが珍しくありません。また演劇の技術を駆使して歴史や国語などの教科を教える「ドラマ教育」がカリキュラムに組み込まれており、どの子も学校生活の中で大なり小なり演劇を経験します。
アメリカでも演劇はスポーツに並ぶ人気を誇る課外活動(部活)です。2002年にアメリカの舞台芸術研究連合(PARC)は、学齢期の子どもを持つ親を対象に演劇やドラマについての調査を実施しました。その結果、回答者の「90%以上が演劇が子どもの教育に役立つ」と考えていることが分かりました。
なぜ欧米で演劇が人気なのか?
一番の理由は、演劇を学ぶことで「人と関わる力=コミュニケーション力」を鍛えることができるからです。伝わりやすい発声・発音方法、目力や表情の効果的な作り方、身振りやジェスチャーなどで人を魅了する技術など、演劇を通して言語と非言語、二つのコミュニケーションスキルを同時に向上させることができるのです。
舞台演劇を作る過程では、参加者同士がコミュニケーションを密にすることが要求されます。互いの思いを伝え合い、互いを尊重し、団結を深め、息を合わせて演じることによって一つの舞台を作り上げていきます。
また舞台は、演者だけなく、台本作り、照明、音響、舞台美術、衣装、監督などたくさんの人たちの支えによって成立しています。舞台を作るという共通のゴールに向かって、多様な人たちと関わり、協力し合う経験が、子どものコミュニケーション力を豊かにしてくれるのです。
グローバル化が進んだ現代社会では、一部の気の合う仲間だけでなく、多様な価値観を持つ人たちと協力し、共存することが求められます。実社会の中でよい人間関係を形成していくトレーニングとして子どもに演劇を経験させることは、欧米社会では「当たり前」なのです。