演劇経験者は「学力」が向上し、自己肯定感も高い
演劇を経験すると学力が高まる理由とは
演劇の効果はコミュニケーション力に留まりません。演劇経験者は「学力」が高くなることが多くの研究によって明らかになっています。
アメリカ大学入学共通テストを実施する「カレッジボード」が2001年から2005年にかけて実施した調査では、演劇経験者は、未経験者に比べて英語(読解力)のスコアが平均で65ポイント高く、算数のスコアが平均で34ポイント高いことが分かっています。
米国ジョージア州アトランタで演劇教育プログラムを提供する「アライアンス・シアター」が行なった調査では、教科学習と演劇教育を組み合わせることで、子どもの学力、特に単語力、文章構成力、感情表現力などの英語力が向上することが分かりました。
演劇では、単にセリフや動きを覚えるだけでなく、この人物はどんな性格だろう、どんな表情や仕草をするのだろう、どんな言葉使いやアクセントで話すのだろうと、想像力を働かせながら台本を読む作業が要求されます。
演劇を経験することで、言葉や文章に対する感性が磨かれ、より深く、多面的にテキストを読み込む力=読解力が向上するのです。読解力はあらゆる教科学習の土台です。読解力が向上すれば学力に良い影響を与えることは明白です。
米国ユタ大学ユースシアターの監督を務めるペネロウプ・ケイウッド氏は、演劇が学業にもたらす効果について次のように述べています。
「舞台演劇はYouTubeやNetflixのように一時停止したり、巻き戻したりすることはできません。演劇を経験することで、周囲の言葉、動き、表情に注意を払う習慣が身につき、聞く力を高度に発達させることができます」
勉強が苦手という子どもの多くは集中して人の話を聞くことができません。自分の言いたいことや他のことが頭をよぎってしまうのです。子どもの集中力を高め、聞く力を改善する手段の一つとして、演劇は有効です。
演劇で「自己発見」すると「自己肯定感」が向上する
日本の若者の「自己肯定感」の低さが多くのメディアで取り上げられています。自己肯定感とは「自分のよさを肯定的に認める感情」ですが、演劇には自分のよい面を発見し、自己肯定感を高める効果があります。
米国ケンタッキー州の「シアターワークショップ・オブ・オズワルド」が舞台演劇に参加した子どもを対象に行なったリサーチによると、演劇を経験したことによって、84%が「自分自身をより尊重するようになり」78%が「自分自身により満足している」と答えています。
その理由として「よりよい自己規律が身につき(80%)」「同時に多くのことを処理できる能力が向上し(82%)」「やるべきことがスムーズにできるようになった(78パーセント)」と回答しています。
舞台演劇に参加し、たくさんの新しい仲間たちと、新しい活動に取り組むことで、子どもはそれまで気づかなかった自分のよい部分に気づき「自分はできる!」という自信を高めることができるのです。
舞台演劇は、安全な環境(周囲の目を気にすることなく)の中で、子どもが思い切り自己表現する機会を提供してくれます。参加者同士がお互いのよさを認め合い、支え合い、あるがままの自分を表現することで、新しい自分を発見することができるのです。