演劇経験者は「学力」が向上し、自己肯定感も高い
演劇経験すると英語が短期間で身につく
演劇のもたらす効果について、最後は英語です。私は25年以上英語教育に携わっていますが、稀に超特急で英語を身につける人に出会うことがあります。そんな語学の達人の多くは「演劇経験者」なのです。
ハリウッドで活躍する渡辺謙さんや真田広之さんは「英語上手」で知られていますが、英語を本格的に習い始めたのは大人になってからだというから驚きです。
なぜ演劇経験者は英語習得が早いかと言うと、ここまで述べてきた通り、コミュニケーション力が高く、言葉を聞き取ったり、セリフを覚えたり、発音や喋り方を真似たり、表情や身体を使って表現する力を鍛えているからです。演劇を通して身につけたテクニックはすべて英語習得に役立つのです。
日本の学校では英語が「教科学習」として組み込まれていますから、どうしても英語を「学問的に学ぶ」習慣が身についてしまいます。すなわち単語の意味を覚え、文法ルールを覚え、英語を日本語に翻訳して理解します。
しかし英語は教科書を翻訳して学問的に学ぶよりも、スポーツや音楽のように、身体全体を使って「コミュニケーションの手段」として学ぶ方が、子どもにとって楽しく、短期間で上達するのです。
事実アメリカの学校では。外国人の子どもたちの英語指導(ESLやELLと呼ぶ)に「リーダーズシアター」「ロールプレイ」「ドラマ」など、演劇の手法を応用することで英語力向上に大きな成果を上げています。
「演劇が子どもに役立つことは分かった。でも本格的にやらせるのは少し不安」という方のために、今は半日や一日単位で気軽に参加できる子ども向けの演劇ワークショップが多く開催されています。まずはそこからスタートすることをお勧めします。きっと子どもが「新たな自分」を発見できるはずです。
[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。
12月15日号(12月8日発売)は「ジョンのレガシー」特集。悲劇の死から40年。「20世紀のアイコン」が残した音楽・言葉・思想。[独自]暗殺直前インタビュー収録