最新記事

仕事

夢の国ディズニーで働くキャストの本音

2020年09月02日(水)15時15分
マデリーン・デュシャルム

再開したディズニーワールドでもアトラクションの列では社会的距離を確保 MATT STROSHANEーWALT DISNEY WORLD RESORT/GETTY IMAGES

<笑顔を忘れずゲストに配慮しなくてはならないが感染拡大が止まらないなかでの仕事は不安がいっぱい>

「ウィズ・コロナ」の夏休み、フロリダ州オーランドのディズニーワールドでゲストを迎える人たちは、感染拡大が止まらない状況をどう見ているのか。「キャスト」と呼ばれる従業員の1人が匿名を条件に本音を語ってくれた。

【関連記事】米ディズニー・ワールド接客キャスト「再開延期を」 嘆願書に7000人が署名

私は(ディズニーワールドの4つのテーマパークの1つである)エプコットのアトラクションでフルタイムで働いている。担当するライドは2つ。シートべルトをちゃんと装着しているか確認するなど、ゲストが安全にアトラクションを楽しめるよう徹底管理するのが私たちの仕事だ。

3月に初めてパークが閉鎖されたときには、2週間の休業だと言われた。労働組合のおかげで当初は有給休暇扱いになって、みんな喜んでいた。「自宅で2週間くつろいで給料がもらえるなんて!」と。

シフトにもよるが、私たちは毎日8時間、長いときは10時間から14時間ほぼ立ちっ放しで働き、しかもずっと笑顔でいなければならない。これは結構きつい。だから人と会えなくても、ステイホームはありがたかった。でも、それが4ヶ月続いた後、やっと仕事に復帰できると聞いたときは、やはりうれしかった。

ただ、不安にもなった。身長制限があるライドでは、子供の背を測る。制限をクリアできるかどうか微妙なときや子供が真っすぐ立っていないときなどはそばに寄って調整しなくてはならず、顔と顔をうんと近づけることになる。

ディズニーキャストは常々、ゲストのために最大限の配慮をするよう言われている。感染防止のルールはそれとは真逆で、融通は利かない。安全のためには譲歩はノー。そういう状況はストレスになる。

逆ギレされる恐怖感も

今のところはマスクの着用や社会的距離の確保でゲストともめたことはない。よく見掛けるのはマスクをしていても鼻が出ていたり、あごまで下ろしていたりする人。そういう人はたいてい飲み物を手にしていて、マスクの着け方を注意すると「これを飲んでいるから」と言い訳する。それでもルールに従うよう、やんわり促さなくてはいけない。

こういうときの会話は神経を使う。相手がムッとして暴力的になることもあるからだ。

ゲストにとっては、(入場制限がある)今はチャンスだろう。「行列がこんなに短いなんて、びっくりだよ」と驚く人もいる。

ただ、禁止事項が多いことに文句を言うゲストもいる。それを聞くと複雑な気持ちになる。ゲストは自分の意思で来ているはずじゃないか......。

でも、制約があるのに遊びに来てくれたゲストには感謝しなければならない。おかげで私は働けるのだから。ただし忘れないでほしい。感染防止のルールはゲストを守るためでもあるが、私たちキャストを守るためのものでもある。

気を付けていても100%安全ではない。最近、ルームメイトの感染が疑われた。そのため私も検査結果が出るまで自己隔離を指示され、その間の給料は出なかった。

フロリダ州では感染者が急増しており、またパークが閉鎖されるかもしれない。上司たちに聞いてみたが、彼らもどうなるか知らなかった。本社のトップが何らかの方針を決めているのだろうが、私たちには知らされていない。

今の状況が続くなら閉鎖されたほうがいいとも思う。州当局が失業者に親切に対応してくれるなら......。


© 2020, The Slate Group

【関連記事】ディズニー恐るべし、『アラジンと魔法のランプ』は本当は中東じゃないのに


20200908issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。

[2020年8月25日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 4

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

  • 5

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること