降り積もるマイクロプラスチックの脅威
From Dust to Microplastics
マイクロプラスチックは自然界の隅々に運ばれる(米アリゾナ州のグランドキャニオン) RAWF8/ISTOCK
<風に乗って北極までたどり着く微細な粒子が、海洋だけでなく地球全体の生態系を変える>
米西部の国立公園と保護区では毎年、ペットボトル約3億本分以上のマイクロプラスチックが、風雨によって堆積しているとみられる。
直径5ミリに満たない微細な粒子のマイクロプラスチックについては、川や海の環境破壊を招くと懸念されているが、大気中を運ばれることの影響はこれまであまり注目されていなかった。
2017年に世界で製造されたプラスチックは推定約3億5000万トンで、年々増加している。その大部分は廃棄物として環境に蓄積され、深海から山頂まで地球上のほぼ全ての生態系に影響を及ぼしている。
ただし、プラスチックの微細な粒子が、北極などの遠隔地を含む地球全体に運ばれる「グローバル・プラスチック・サイクル」については、まだ分からないことが多い。
プラスチックはちりと共に風で運ばれながら、乾燥する季節に地面に落ち、あるいは雨や雪などの降水時に落下して堆積する。
6月にサイエンス誌に論文を発表したユタ州立大学のジャニス・ブラーニー助教らのグループは、グランドキャニオンやカリフォルニア州のジョシュアツリー国立公園など、米西部の人里離れた保護区11カ所で、マイクロプラスチックの運搬と蓄積を分析した。
きっかけは全く偶然だったと、ブラーニーは語る。「数年前、ちりに含まれるリンの堆積の調査を始めた。主な目的は、ちりの栄養分の生物学的な利用法と、遠方の繊細な生態系に与える影響を調べることだった」
「ちりを顕微鏡で観察すると、石英の粒子や虫のかけらに交じって、色とりどりの粒子がたくさんあって衝撃を受けた。かなり広域から頻繁にサンプルを採取していたから、これらのプラスチック粒子がどこから来たのかを推測できるかもしれないと考えた」
雨天時と乾燥時に落下した粒子の大きさと形状を比べると、11の保護区で1日に1平方メートル当たり平均132個のプラスチック粒子が堆積していることが分かった。この数字から推測すると、米西部の保護区全体で年間1000トン以上が堆積していることになる。
吸い込みやすいサイズ
しかも、雨天時にはより大きなマイクロプラスチックが堆積しており、これらの粒子は局地的な暴風雨で近くの都市部から運ばれてきた可能性が高い。一方、乾燥した天候のときに堆積したマイクロプラスチックは、大気中のちりと同じように、粒子がより小さく、より遠くまで運ばれる傾向が見られた。