最新記事

環境問題

降り積もるマイクロプラスチックの脅威

From Dust to Microplastics

2020年07月08日(水)19時05分
アリストス・ジョージャウ(科学担当)

マイクロプラスチックは自然界の隅々に運ばれる(米アリゾナ州のグランドキャニオン) RAWF8/ISTOCK

<風に乗って北極までたどり着く微細な粒子が、海洋だけでなく地球全体の生態系を変える>

米西部の国立公園と保護区では毎年、ペットボトル約3億本分以上のマイクロプラスチックが、風雨によって堆積しているとみられる。

直径5ミリに満たない微細な粒子のマイクロプラスチックについては、川や海の環境破壊を招くと懸念されているが、大気中を運ばれることの影響はこれまであまり注目されていなかった。

2017年に世界で製造されたプラスチックは推定約3億5000万トンで、年々増加している。その大部分は廃棄物として環境に蓄積され、深海から山頂まで地球上のほぼ全ての生態系に影響を及ぼしている。

ただし、プラスチックの微細な粒子が、北極などの遠隔地を含む地球全体に運ばれる「グローバル・プラスチック・サイクル」については、まだ分からないことが多い。

プラスチックはちりと共に風で運ばれながら、乾燥する季節に地面に落ち、あるいは雨や雪などの降水時に落下して堆積する。

6月にサイエンス誌に論文を発表したユタ州立大学のジャニス・ブラーニー助教らのグループは、グランドキャニオンやカリフォルニア州のジョシュアツリー国立公園など、米西部の人里離れた保護区11カ所で、マイクロプラスチックの運搬と蓄積を分析した。

きっかけは全く偶然だったと、ブラーニーは語る。「数年前、ちりに含まれるリンの堆積の調査を始めた。主な目的は、ちりの栄養分の生物学的な利用法と、遠方の繊細な生態系に与える影響を調べることだった」

「ちりを顕微鏡で観察すると、石英の粒子や虫のかけらに交じって、色とりどりの粒子がたくさんあって衝撃を受けた。かなり広域から頻繁にサンプルを採取していたから、これらのプラスチック粒子がどこから来たのかを推測できるかもしれないと考えた」

雨天時と乾燥時に落下した粒子の大きさと形状を比べると、11の保護区で1日に1平方メートル当たり平均132個のプラスチック粒子が堆積していることが分かった。この数字から推測すると、米西部の保護区全体で年間1000トン以上が堆積していることになる。

吸い込みやすいサイズ

しかも、雨天時にはより大きなマイクロプラスチックが堆積しており、これらの粒子は局地的な暴風雨で近くの都市部から運ばれてきた可能性が高い。一方、乾燥した天候のときに堆積したマイクロプラスチックは、大気中のちりと同じように、粒子がより小さく、より遠くまで運ばれる傾向が見られた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること