降り積もるマイクロプラスチックの脅威
From Dust to Microplastics
「私たちが観察した粒子は、ちょうど人が吸い込みやすいサイズで、肺の組織や上気道に沈着する可能性がある」と、ブラーニーは言う。「それが炎症反応や病変につながり得ることは、いくつかの研究で指摘されている。繰り返しさらされると、より深刻な影響をもたらしかねない」
堆積したプラスチックが土壌の温度などの特性を変えるのではないかという研究も始まっている。今年4月には、土壌のプラスチックが植物の成長に悪影響を及ぼし得るという論文が、グローバル・チェンジ・バイオロジー誌に掲載された。
論文は、マイクロプラスチックの堆積が土壌の生態系に影響を及ぼし、微生物や生態系サービス(人類が生物や生態系から得る利益)に干渉する可能性を指摘している。さらに、大気汚染モニタリングの対象にマイクロプラスチックも含めるべきだと提言する。
「大気中のマイクロプラスチックの発生源の1つは都市だから、私たち全員に責任があることになる。ごみとして捨てられたものだけでなく、庭にあるプラスチック製品の全てが、大気中のプラスチック汚染を助長している」と、ストラスクライド大学(スコットランド)のスティーブ・アレンは語る。
土壌も昆虫も動物も
自然保護区域はセーフティーネットだと、ブラーニーは言う。農薬が大量に使用されている地域や都市公害から遠く離れており、複雑な生態系が生き残るための安全地帯であるはずだ。
しかし、マイクロプラスチックはこのセーフティーネットに、プラスチックの原料である化学物質に加えて、他の化学物質も運んでくる。それが土壌中と水中の昆虫や動物に深刻な影響を与える可能性も示唆されている。
トロント大学のチェルシー・ロッシュマン助教らは、サイエンス誌の同号に掲載された論評にこう書いた。
「(ブラーニーたちの研究の)重要な洞察は、ちりのグローバルな移動を調査するツールを、マイクロプラスチックにも応用できるという点だ。測定された粒子の大半は、大気中のちりと同じく、グローバルな移動に最適なサイズだった。マイクロプラスチックは土より密度が低いため、自然のちりよりさらに長い距離を移動するかもしれない」
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[2020年7月 7日号掲載]