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水族館

単なる観光スポットではない──魚たちを守る水族館を財政難から守れ

Drowning Conservation

2020年07月01日(水)16時55分
サマンサ・ムカ(米スティーブンズ工科大学助教)

climbusa-iStock

<新型コロナによる一時閉館で水族館は財政難に陥っている。さまざまな絶滅危惧種の保護活動にも影響が>

水族館が苦境にあると聞いたら、意外に思うだろうか。

確かに、新型コロナウイルスの流行で一時休館する前よりも、水族館は幅広い人々の目に触れていそうだ。インターネットには、客のいない館内を歩くぺンギンや走り回る子犬といった動画があふれている。自宅学習する子供を持つ親には、毎日のようにサメの水槽のライブ映像配信の通知が来る。だが、いくらネット上での人気が高まっても、水族館の財政的な窮状は変わらない。

生き物の飼育にはお金がかる。水槽の環境を維持するにはあらゆる注意が行き届いていなければならず、例えば熱帯魚ならヒーターと特定の餌が必要だ。カワウソの餌代がホッキョクグマのものより高いことをご存じだろうか?

それらを賄う動物園や水族館の収入は、その85~90%を入場料に頼っている。

アメリカでは、コロナ禍による休館以前から財政難で、今や完全閉館を検討している水族館もある。ほとんどが支援者に寄付を募り、州政府や連邦政府の財政支援を求めてロビー活動を行うところも増えている。

筆者は、海洋科学や海洋保護における公立水族館の役割を研究している。水族館は教育施設として重要である一方、あまり目立たないながらも、過去100年以上にわたり、絶滅危惧種を守る活動の重要な場となってきた。

楽しい展示はなくても

絶滅危惧種の保護計画は何年もかかり、成果が表れるまで何十年もかかることがある。そうした長期の計画に寄与できるのが、動物園や水族館のような安定した施設だ。もし水族館を失えば、週末に子供連れで行くのにぴったりな場所を失うだけでは済まない。

多くの水族館は、在来種の保護活動を専門に行っている。その取り組みは必ずしも入場者を呼び込む展示には結び付かないし、水槽で見ても面白みのない生物もいる。ノースカロライナ州のゴーファーカエルや太平洋のブラックシーバスに、ぺンギンやラッコのような魅力はない。だが、これらは地域の河川の要となる種で、水族館は必死に保護活動をしている。

乱獲のために、カリフォルニア州水域で絶滅の危機に瀕している白アワビがいい例だ。絶滅危惧種法に基づき、2001年に米政府の保護を受けた最初の海洋無脊椎動物だが、現在はカリフォルニア州水域での個体数が非常に少なく、繁殖ができない。そこで「白アワビ復元共同体」という組織が誕生。同州の太平洋水族館もこれに加わり、海洋大気局(NOAA)やカリフォルニア州魚類野生生物局、カリフォルニア大学デービス校などと協力して、白アワビの繁殖と移植に取り組んでいる。

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