「男性の匂いカタログ」運営者に聞く、「男の中の男」の匂いの世界
The “Essence of Man”
奥深い、男の匂いの表現…(写真はイメージ)Jun-iStock
<ロマンス小説作家は理想の男性の体臭をこう表現。ツイッターの専門アカウント運営者にマニアな分析を聞く>
女性たちに不動の人気を誇るロマンス小説。ただ妙に気取った文学的な表現が目につくのも事実だ。特にヒーローの体臭を詩的かつ情熱的に表現した凝ったフレーズには思わず笑ってしまうことも......。
そんなフレーズをせっせと集めてツイッターで紹介しているマニアがいる。2年ほど前から「男性の匂いカタログ」というアカウントを運営しているアリソン・ブリードだ。スレート誌のマリッサ・マーティネリが話を聞いた。
――2018年の7月にこのアカウントを開設したのは?
この年から自分が読んだものを全て記録し始めた。ロマンス小説の記録では、何かトピックを決めて独特の表現を集めてみたら面白いと思った。女性の性器を婉曲的に表すフレーズなども集めていたが、男性の体臭を表すレトリックに特に興味を引かれた。
――なぜ?
女性の体臭についての表現よりも創意工夫に富んでいるから。分類してみると、女性の体臭は甘い香りがする花かイチゴなどおいしそうな食べ物のどちらかに例えてあって、面白みに欠ける。いま読んでいる作品のヒロインはカーネーションの匂いがすると書いてあるけど、カーネーションに匂いなんかある?
――男性の体臭はどんなふうに表現されている?
アメリカスギや常緑樹など木の香りとか。香辛料とかんきつ類の香りは並べて使われることが多いけど、今日読んだ作品ではこの2つがちゃんと区別してあった。ビャクダンの香りとか、せっけんの匂いに例えられることも多い。
そして必ずあるのは、その男性のエッセンスというか、彼独特の匂い。ヒーローは例外なく、いかにも男らしい、むせ返るような男の匂いがすることになっている。
香水の匂いには最初に感じるヘッドノート、主要な香りのハートノート、ほのかな残り香のべースノートの3段階があり、ロマンス小説でもたいがい3段階で表現される。例えばアリッサ・コールの作品では、ヒーローのタビッシュは鋼鉄、そして柑橘類の匂いがして、ヒロインを優しく包むのは「タビッシュそのものの匂い」。ケイト・クレイボーンの作品に登場する男性はかがり火の匂い、木々の匂い、そして「紛れもなく彼の匂い」がすると書いてある。
社会的地位や職業によっても表現が違ってくる。労働者階級なら清潔で爽やかな匂い。富豪なら革やウイスキーの匂い、スポーツマンならジャコウの香りなど。共通するのは男の中の男の匂いだ。