日本と雲泥の差。「神が守る」と言う人も現れはじめたヨーロッパの不安
ジュネーブ大学病院側に設置されたコロナウイルス検査のための医療用テント(3月17日) Pierre Albouy-REUTERS
<2月最終週にスイスで初の感染者が発生してから2週間半経ち、政府が100人以上の集会禁止と全国休校を宣言。状況は一変した...>
対岸の火事が一気に非常事態に~第二次大戦以来の軍隊大量動員で援助
新型コロナウイルスのヨーロッパでの感染拡大が、深刻な状態だ。まだピークには達していないといわれ、寸分の狂いない状況予測は誰にもできない。改めて、日本時間の3月19日早朝の統計をまとめてみた(表参照)。
3月16日、日本では、5月に嵐が「アラフェス」を7年ぶりに開催するという発表があったが、ヨーロッパから見たら雲泥の差だ。日本での感染は、少し落ちつき始めたと捉えられているのか。イタリアに続いて、スペイン、ドイツ、フランスで多くの商業施設が閉鎖、教育施設が休校、自宅待機(移動制限)などの措置が次々に出され、まったく穏やかでない。スイスでも同様の措置が出ているが、第二次世界大戦以来で初めて大量の軍隊を動員することが決まり、最大8千人が患者の搬送やケア、病院内の仕事(ベッドの消毒や洗濯など)、仮設病院の建設などの仕事にあたる。
この非常事態を信じ難い。筆者の夫の勤務先でも感染者(違うビルのほかの部署の人)がいたり、息子が通う高校の生徒の保護者(医師)で、診察した患者に感染者がいたなど、身近で感染の話を聞くようになったとはいえ、ウイルスがここまで一気に広がるとは、多くの人たちはまったく想像していなかっただろう。
振り返れば、日本で感染が始まった1月は、スイスでマスクや消毒液を買っておいた人は一部だったはずだ。筆者は、近所に住む日本人の友人と「マスクを買った?」と話題にしていた。2月に入り、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス内での集団感染について報道され始め、中旬には、フランスでヨーロッパ初の感染による死亡者(80歳の中国人観光客)が出た。スイスは、スイス国際航空が中国本土発着の全便を欠航していて、冬でも中国人観光客団体が押し寄せる人気スポットは閑散としていた。このころ、スイスでは約250人が検査を受けていて全員が陰性だった。
対岸の火事ではなくなったのは、2月の最終週にスイスで初の感染者が発生してから2週間半経ち、政府が100人以上の集会禁止と全国休校を宣言したときだ。
パニック買いでトイレットペーパーが消えた
その日から、全国的にパニック買いが起きた。世界のあちこちで見られるように、トイレットペーパーも消えた。政府が「備蓄は十分です(*)。いまパニックに陥る理由はありません」と述べても、そのうち、他国のように外出制限が出て、買い出しの回数を減らすことになるかも、流通も滞るかもと慌てた人たちがあらわになった。
*政府は非常時の政策として、全国民のために最低3か月分の食料――たとえば16万トンの穀類、6万3千トンの砂糖、1万5400トンの米、3万3700トンの食用油――を備蓄している