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ニューヨークのゲイ社会劇が、ニューヨークでウケない理由

Many Ghosts, No Soul

2020年02月05日(水)19時30分
アイザック・バトラー

30代のエリック(左)は年配のゲイ男性らと交流しながら居場所を探していく SARA KRULWICHーTHE NEW YORK TIMESーREDUX/AFLO

<3世代にわたる同性愛者の世代間ギャップをテーマにした『ジ・インヘリタンス』は役者の動きが少なく言葉ばかりが空回り>

計画どおりに事が進めば、米劇作家マシュー・ロぺスによる『ジ・インヘリタンス』はこの冬のブロードウェイの目玉になるはずだった。

計7時間に及ぶ2部構成の舞台は、2016年のニューヨークで生きる3世代の同性愛者たちの物語。20世紀初頭のイギリスを舞台に、異なる社会階級の家族間の交流を描いたE・M・フォスターの小説『ハワーズ・エンド』を下敷きにした、高尚で重厚な叙事詩との触れ込みだった。

演出を手掛けるのは希代のイギリス人演出家スティーブン・ダルドリー。ロンドンで大人気を博し、昨年は英演劇界を代表するローレンス・オリビエ賞の最優秀新作賞にも輝いた作品が満を持してアメリカに上陸した、はずだった。

だが批評家や観客の反応はいまひとつ。米メディアの反応は賛否半々または否定的で、チケットの売れ行きも半分以下にとどまっている。

イギリスでのヒット作がアメリカで共感を呼ばない(あるいはその逆の)場合、たいていは文化の違いや英語のニュアンスの差異が原因とされる。だが『インヘリタンス』はニューヨークを舞台に1980~90年代のエイズ危機やゲイの歴史を描いたアメリカ的な作品で、キャストの大半もアメリカ人。この手の作品が熱い論争を呼ぶのは当然だ。

筆者はむしろ脚本の質に致命的な問題があると感じた。 戯曲の構造が未熟で、物語に感情移入できないのだ。

30代前半のユダヤ系インテリ男性エリック・グラスは、過去のトラウマを抱えたパートナーのトビーと同棲中。2人は年配のゲイカップル、ヘンリーとウォルターと親しくしており、さらにゲイの若手俳優アダムとも仲良くなる。

だがエリックが豪華マンションからの退去を命じられ、日常にひずみが生じ始める。トビーは脚本家として脚光を浴び、ウォルターは癌で急逝。階級間の分断がテーマだった『ハワーズ・エンド』に対し、『インヘリタンス』では3世代のゲイ男性たちの世代間ギャップがあらわになる。

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