ありのままの自分を受け入れる心(セルフコンパッション)と自殺率の関係
参加者のうち、ここ1年で自殺について「たまに」「よく」「しょっちゅう」考えたという人は30%に上り、これまでの人生で少なくとも1度は自殺未遂をしたことがあるという人は12%いた。
しかしセルフコンパッション尺度で、自分の性格の嫌なところも受け入れる、または自分が失敗してもそれは人間のあり方だと思う、といった考えに同意するなど、高いセルフコンパッションを示した人ほど、自殺行動は少なかった。この傾向は、抑うつ症状が強い人や、怒りや恥などの感情が強い人、自分の存在が他者の負担になっているとの思いが強い人、他者に受け入れてもらっているという感覚が低い人など、よりつらい心理状況にいる人ほど強かったという。
セルフコンパッションは有効な「コーピング・スキル」
ヒルシュ教授はPsyPostに対し、対人関係で困難に直面していたり心理的につらい時期などは、セルフコンパッションと自殺との有益な関係は、弱まるのではなくむしろ強まると説明。セルフコンパッションは、自分の状態が良いときに伸ばしておいてつらいときに活用することができる、「コーピング・スキル」(ストレスに対処する技術)だと話した。
ただし、自分にやさしくするのは簡単ではないと指摘。他の人たちも似たような経験や感情を持っているのだと理解したり、日々の生活をマインドフルに意義深く過ごしたりするなど、練習が必要だと話した。
同教授は今回の調査について、断面的であるためより長期間にわたる研究が必要であるとし、また退役軍人以外の人を対象にした研究の必要性も指摘している。
なお、同教授は過去に大学生の自殺行動とセルフコンパッションとの関係性についての調査も行っており、このときもセルフコンパッションが自殺リスク低減に有効との結論に至っている。