3.11から9年、福島の避難指示区域は野生動物の楽園に
Wildlife Thriving at Fukushima
福島の避難指示区域で見つかった野生のサル UNIVERSITY OF GEORGIA'S SAVANNAH RIVER ECOLOGY LABORATORY
<人が住まない汚染地区で、野生の生き物の種類と数が増えていた>
東京電力福島第一原発の事故から、もうすぐ9年。放射能汚染で人の立ち入りが禁じられた区域で、野生動物が大量に繁殖している。
米生態学会の機関誌に発表された報告によると、福島の放射能汚染地区に設置した監視カメラの膨大な数の画像を分析したところ、サルやタヌキ、ニホンノウサギ、イノシシなど20種以上の野生動物の生息が確認された。
11年の巨大津波で原発が非常事態に陥った後、政府は周辺の20キロ圏内を避難指示区域に指定した。14年以降、避難指示は段階的に解除されているが、住民の帰還は思うように進んでいない。
ジョージア大学のジェームズ・ビーズリー准教授らは、今も放射能レべルが高く人の立ち入りが禁じられている高汚染地区、立ち入りが制限される中汚染地区、そして現に人が居住している低汚染地区に、それぞれ監視カメラを設置した。120日に及ぶ観察で撮影された写真は26万7000枚以上。詳しく見ると、立ち入り禁止区域では野生動物が大量に生息していることが分かったという。
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最も多かったのはイノシシで、4万6000枚以上の画像に写っていた。特に立ち入り禁止区域では、人が現住する区域に比べて4倍近い生息数が確認された。
放射能汚染で放棄された土地で野生動物が急増する現象は、同じく原発事故で汚染されたチェルノブイリでも報告されている。「信じ難いだろうが、原発事故後の数年でチェルノブイリ周辺では大型哺乳類の数が増えた。今は立ち入り禁止区域のあちこちで、多くの種が生息数を増やしている」と、ビーズリーは本誌に語った。
ただし福島でもチェルノブイリでも、確認できたのは生息数の増加だけ。動物たちの健康状態は分かっていない。従来の研究によると、長期にわたる放射線被曝は動物の生殖能力を損なう可能性がある。
「確かなのは、被曝の影響があるとしても、それが現時点で個体数の回復には影響していないということだ」と、ビーズリーは言う。
除染もされていない山林に暮らす動物たちに、放射能による突然変異が起きていないか、生殖能力が落ちていないか。そうしたことを探れるのはまだまだ先のことだ。