デキる女を支える男 目標を持つ女性を応援する男性の新しい可能性
A Feminist Rom-Com
冴えないジャーナリスト(ローゲン、左)と大統領の座を狙う(セロン)の恋の行方は? ©2019 FLARSKY PRODUCTIONS, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
<美しくてやり手の国務長官と売れないジャーナリスト。異色カップルを下ネタ満載で描く『ロング・ショット』>
『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』のシャーロット・フィールド(シャーリーズ・セロン)は、誰もが憧れる仕事を持ち、高級ファッションを身に着けている。そして心のどこかで、いつか理想の男性が現れて人生にくつろぎと喜びを与えてくれることを願っている──ここまでは多くのロマンチックコメディーのヒロインと同じだ。
だが、他のロマコメと違う点がたくさんある。シャーロットは汚い言葉を使い、セックスをし、ダサいパンツスーツも着る。おまけに彼女がキャリアにのめり込むのは、男性パートナーのフレッド(セス・ローゲン)の喜びなのだ。
現実と同じく『ロング・ショット』の世界でも、権力の座にある女性は容赦ないチェックを受け、デートの相手には適さないと思われている。この作品の最も魅力的な部分は、強い女性を支えるという役割に満足する男性がいるという設定。これは歴史上、女性が配偶者に対してずっと果たしてきた役割だ。
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ローゲンはいつもどおりの得意技を存分に発揮する。下ネタや人種ネタを次々と繰り出し、自分のルックスについて自己憐憫をたっぷり示す。
しかし本作は、全く新しい何かを感じさせる。性差別に関するさまざまな視点や、女性を助ける男性パートナーという希少な存在が、「間の悪い勃起」や「空飛ぶ精液」と共に描かれる今までになかったロマコメなのだ。ユニークなハッピーエンドに至る展開は、ロマコメの方程式に新鮮でタイムリーなひねりを加えて、自らの目標を持つ女性を応援する男性の新しい可能性を示している。
ロング・ショット(大ばくち)とは、史上最年少の国務長官シャーロットが大統領になる見込みを指す。上司の能なし大統領(ボブ・オデンカーク)が再選を目指さないことを決めると、シャーロットは大統領選出馬を決意。そして幼なじみのジャーナリストのフレッドと偶然再会し、彼をスピーチライターに雇う。
新感覚の中に残念な点
ローゲンは相変わらず面白いが、セロンの演技はもっとすごい。例えばシャーロットが人前で串に刺さった料理を食べられないことや、目を開けて立ったままの「マイクロ昼寝」をすることを真実味たっぷりに、しかも人間らしく見せる。