「結婚を1人の男と女の間に限定したところで、異性愛性が真に保証されるわけでは決してない」
Not as Straight as We Thought
──とはいえ、妻とレズビアンの恋人との関係ゆえに夫との関係がうまくいかなくなったり、妻が離婚しようとする場合には、夫からの逆襲がないことを祈るしかなかった。
そうだ。夫の中には妻が女性と恋愛関係にあることを示す手紙や証拠を取っておいたり、それを知っているだけであっても、親権争いや離婚においてそれを女性に不利な材料として使う人もいた。
既婚でバイセクシュアルを公言しているケイティー・ヒル前下院議員をめぐる今年10月の騒動(女性スタッフと性的関係にあったことを暴露されて辞任した)もそうだ。21世紀的な出来事だったと言う人は多い。リベンジポルノやら複数の相手との関係やら、女性の性的な柔軟性もしくは両性愛が出た話だったからだ。
だがこれは、彼女の夫が引き起こした事件でもあった。ヒルの夫は結婚生活が続いている間は妻と他の女性との性的関係を許容していた。だが妻との関係がうまくいかなくなるとそれをネタに妻を攻撃した。戦後期を見ても、これはとてもよくある話だ。
【参考記事】同性愛を公表したらキャリアに傷が──クラシック音楽界とメディアのタブー
──誰もが心の中に配偶者とは別の愛人のための秘密の部屋を持っているけれど、秘密はいつでも破られ得ると。
そのとおり。中には本当に優しい夫もいた。例えばパット・ガンティのケースだ。ある朝、夫はパットからの手紙を読んだ。そこには自分はレズビアンで、夫婦関係を終わらせる必要があると書かれていた。夫は彼女を抱き締め、こう尋ねた。「君を支えてあげるにはどうすればいい?」
夫はパットが家を出ていった後も長い間、パットの母と暮らして面倒を見た。愛情に満ちた男性だった。
2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。
[2019年12月24日号掲載]