最新記事

カルチャー

恐怖の12分間...血と涙の『くるみ割り人形』残酷な舞台裏

Blood, Sweat, and Snowflakes

2019年12月19日(木)19時30分
ドリー・シェブレン(ジャーナリスト、元バレエダンサー)

あの音楽を耳にすると

『くるみ割り人形』のおかげで踊りに磨きをかけられるのは、ダンサーにとってありがたいことだ。「何かを何度も繰り返せるのは特別な体験だ」と、ラップは言う。「私たちは何時間もリハーサルをするけれど、その結果は大抵、数時間で終わりになってしまうから」

クリーブランド・バレエ団のジョナス・ゴッドウィンに言わせれば、本作の公演は身体表現を実験するチャンスだ。「異なる腕や頭の動き、違う笑顔を試すことにしている。常にやるべきことがあって、全然飽きない」

機械的に踊るモードに入らないよう努めていると、マクスウェルは話す。「いつだって初めて『くるみ割り人形』を見る人がいる。自分は49回踊っていようと、彼らにとってはシーズンにたった1度の機会。そのためにお金を払っているし、わくわくしている。そう思えば、自分の中から何かが湧き出てくる」

結構な心掛けだ。ただし、舞台を降りたときまでそんな気持ちではいられない。この時期、ショッピングセンターなどでやたらとチャイコフスキー作曲のバレエ組曲『くるみ割り人形』を耳にすると言い掛けると、フリーマントルは声を上げた。

ああ! あれはやめてほしい。ほかの人たちにはショッピング中の素敵なサプライズだろうけど、僕たちにとっては黒板を引っかいたときの音と同じだ」

©2019 The Slate Group

20191224issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月24日号(12月17日発売)は「首脳の成績表」特集。「ガキ大将」トランプは落第? 安倍外交の得点は? プーチン、文在寅、ボリス・ジョンソン、習近平は?――世界の首脳を査定し、その能力と資質から国際情勢を読み解く特集です。

[2019年12月17日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    「男性に守られるだけのヒロイン像」は絶滅?...韓ド…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    韓国のキム・ジヨンに共感する、日本の佐藤裕子たち..…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 2

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    「ショート丈」流行ファッションが腰痛の原因に...医…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…

  • 5

    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ新政権ガイド

特集:トランプ新政権ガイド

2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?