最新記事

カルチャー

恐怖の12分間...血と涙の『くるみ割り人形』残酷な舞台裏

Blood, Sweat, and Snowflakes

2019年12月19日(木)19時30分
ドリー・シェブレン(ジャーナリスト、元バレエダンサー)

NW_KWN_04.jpg

『くるみ割り人形』の舞台中でも特に素晴らしい「雪のワルツ」のシーンは苦痛だらけ KEVIN SULLIVANーDIGITAL FIRST MEDIAー ORANGE COUNTY REGISTER/GETTY IMAGES

頭痛のタネのティアラ

同じ演目を毎年繰り返すことには利点もある。バレエ団のダンサーは大抵、本作の役はどれも経験しているから、誰かが病気やけがで突然降板しても代役は簡単に見つかる。

踊ったことのない役があるかと質問すると、コロンビアシティ・バレエ団のプリンシパル、ボニー・ボイタージョリーは考え込んだ。「ネズミの王様はやったことがない。でも、ネズミ役は経験済み」

サンフランシスコ・バレエ団所属のべンジャミン・フリーマントルも同様だ。「誰でも、それなりにこなせると思う。どの役を振られても、ある程度のことはできるはず」

水膨れやマメはこの時期の風物詩であり、ダンサーにしてみれば、わざわざ愚痴を言うまでもないことだ。「長い時間トーシューズを履いているから、出来て当然」と、NYCBのアレクサ・マクスウェルは話す。

華麗な衣装や髪飾りは観客の目の保養だが、ダンサーにとっては文字どおり頭痛のタネだ。マクスウェルはNYCBに入団後、初めて『くるみ割り人形』の公演に臨んだ際、雪の精のティアラがずれないよう神経質なほど気を使っていた。「ヘアピンを50本ぐらい使って留めていたから、いつも頭が痛かった」

そこまでしても、災難が避けられないときもある。「ピンを山ほど使ってもちゃんと固定できていなくて、踊りが終わる頃には(ティアラが) ピン1本でぶら下がって、顔から突き出していた。すごく恥ずかしくて、解雇されるだろうと思った」

だが、バレエダンサーは同じ間違いをめったに繰り返さない。「今ではピンは7本だけ。どこにどう留めたらいいか分かれば、最低限で済む」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    「男性に守られるだけのヒロイン像」は絶滅?...韓ド…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    韓国のキム・ジヨンに共感する、日本の佐藤裕子たち..…

  • 5

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 1

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 2

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    「ショート丈」流行ファッションが腰痛の原因に...医…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…

  • 5

    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ新政権ガイド

特集:トランプ新政権ガイド

2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?