「カルメンはパンセクシュアルだと思う」 バイセクシャルのオペラ歌手ジェイミー・バートンに聞く
“I’m So Proud to Be Doing It”
――プロムスのラスト・ナイトは大舞台だが、あなたらしさをどのように表現するつもりか。
ありがたいことに、BBCは私らしさを完全に尊重してくれた。昨年10月にミーティングをしたとき、私は紫色の髪で、左側を刈り上げていて、鼻にピアスをしていた。「来年までに髪を伸ばせって言われるかな。どのくらい保守的な感じが求められるんだろう」と思っていた。
でも思い切って、「ルール・ブリタニカ」のとき、私が心からサポートして振ることができるのはレインボーフラッグだけだと言うと、「もちろん、どうぞ」と言われた。こうして結束と一体化がテーマになった。どちらもとても重要だと思っているから誇りに思う。
舞台では、2つのことを示したい。ボディー・ポジティビティー(ありのままの体形を肯定すること)と、バイセクシュアルの認知度を高めることだ。
私はこの体形のために、実際のオぺラではなかなかキャスティングしてもらえない役がある。その役のアリアを最高に美しく歌い上げて、優れたストーリーテラーは体形によって決まるのではないことを示したい。具体的には、『カルメン』のカルメン役、『サムソンとデリラ』のデリラ役、そして『ドン・カルロ』のエボリ役だ。
また、今年は(LGBTQの権利擁護運動の転機となった)ストーンウォール事件の50周年だから、(LGBTQに理解があったとされる)ジュディ・ガーランドの代表曲「虹の彼方に」や「アイ・ガット・リズム」も歌いたいと思っている。
――あなたはテレビ番組『ル・ポールのドラァグ・レース』の大ファンで、女装カルチャー全般が好きだとか。
男に生まれていたら、ドラァグ・クイーンになっていたと思う。彼らには大きな敬意を抱いている。とりわけ80年代、エイズのために(当時は同性愛者の病気という誤解が蔓延していた)、血のつながった家族から拒絶された人たちが、家族のように助け合って生き抜いた。
ル・ポールは大好きだし、ドラァグ・パフォーマンスをする女性たちも好きだ。
私がやっていることと、彼らがやっていることの間には明らかに共通点がある。私たちもリサイタルのときは、特殊なメークアップをして普段とは全く異なる自分になる。それがオぺラなら衣装を着て、カツラを着けて、ものすごい厚化粧をする。その全てが創造のプロセスであり、パフォーマンスに影響を与える。大好きなプロセスだ。
――オペラで最もLGBTQ的な役は何だと思うか。
オペラの定型的な登場人物にはゲイが多いと思う。例えば、カルメンは観客を本気で誘惑しているから絶対ストレートじゃない。パンセクシュアル(全性愛者)だと思う。ちょっと視点を変えてみると合点がいく。
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[2019年10月15日号掲載]