「カルメンはパンセクシュアルだと思う」 バイセクシャルのオペラ歌手ジェイミー・バートンに聞く
“I’m So Proud to Be Doing It”
オペラ・メンフィスの舞台で『ボナペティ!』に出演(2013年) SEAN DAVIS
<ロンドンの大舞台で圧巻のパフォーマンスを見せたアメリカ人オぺラ歌手ジェイミー・バートンがバイセクシュアルとしての誇りと歌手としての夢を語る>
BBCプロムスといえば、ロンドンで毎夏8週間にわたり開かれるクラシック音楽の祭典。9月の第2土曜日に開かれる「ラスト・ナイト」は、その最 後を飾るコンサートで、「威風堂々」や「エルサレム」など「大英帝国万歳」的な曲で締めくくられるのが恒例だ。
今年はその独唱者にアメリカ人のメゾソプラノ歌手ジェイミー・バートン(37)が起用された。バートンはLGBTQ(性的少数者)の中でも、バイセクシュアル(両性愛者)であることを公言している人物。それだけに、彼女の伸びやかな歌声だけでなく、アメリカ人とLGBTQという2つのアイデンティティーをどのように表現するかが大きな注目を集めていた。
コンサートの終盤、英国賛歌メドレーの口火を切る「ルール・ブリタニア」で、バートンはバイセクシュアルのシンボルカラー(ピンク、紫、青の3色)をモチーフにしたドレスで登場。観客が英国旗を振るなか、LGBTQのレインボーフラッグを振って大歓声を浴びた。
アメリカに戻ったバートンは10月20日からニューヨークのメトロポリタン・オぺラで『オルフェオとエウリディーチェ』に主演する。それも、死んだ妻を黄泉の国から連れ戻すオルフェオ役だ。バートンのバイセクシュアルという個性は、オぺラのストーリーさえ変える。
果たしてバートン自身は、プロムスの大役にどのような意気込みで臨んだのか。スレート誌のジューン・トーマスが、プロムスの舞台を控えたバートンにロンドンで話を聞いた。
――オペラの世界はLGBTQに寛容なことで知られる。
クラシック音楽の世界全般が何世紀も前からそうだった。私がこの世界に心のよりどころを見つけたのも、それが大きな理由の1つだったと思う。すぐに自分と同じ(LGBTQの)人を見つけることができた。カミングアウトしたのは比較的最近(2014年)だが、とてもスムーズにできたし、不安はほとんどなかった。