最新記事

犯罪

スカート内盗撮おとがめ無しのドイツ やっと違法化の動き

2019年09月19日(木)17時30分
モーゲンスタン陽子

ようやく違法化へ...... AlexLinch - iStock

<ヨーロッパで「スカート内盗撮」をめぐる法規制が徐々に始まってきている......>

先月21日、555人もの女性のスカート内部を盗撮し、ポルノサイトに投稿していたコロンビア国籍の男がスペインで現行犯逮捕された。事件はヨーロッパ全土で報道されたが、これを受けてupskirting「アップスカーティング・スカート内盗撮」という行為に注目が集まっている。

スペインではスカート内盗撮は性的虐待とされており、男は懲役刑になる可能性がある。しかしながら、盗撮にまつわるヨーロッパの法環境は意外と曖昧だ。イギリスでは、イングランドとウェールズでようやくこの4月にアップスカーティングが違法化されたばかり(それまではスコットランドのみ)。ドイツに至ってはなんと、現時点ではほぼお咎めなしだ。

2人のドイツ人女性が請願を開始

イギリスでスカート内盗撮が違法化されたのは、ジーナ・マーティンという、作家で盗撮の被害者でもある女性が始めたオンライン請願書によるところが大きい。違法化のおかげで、盗撮犯に最高2年の禁固刑を与えることが可能となった。この影響を受けて、ドイツでもハンナ・ザイデル(28)とイダ・マリー・ザッセンベルク(25)の2人の女性がオンライン請願書を立ち上げた。

ザイデルはまず13歳のとき、修学旅行中に他校の教師にスカート内を盗撮された。2度目は16歳のとき、コンサート会場で起こった。しかしながら、泣き寝入りするほかなかった。その場で撮影者を問いただし、証拠の写真や動画を押さえければならない。十代の少女にそう簡単にできる行為ではない。しかも、そもそも違法ではないのだから、警察を頼ることさえできない。

物質的・身体的被害はないにしても、プライベートな部分を勝手に撮影され使用される女性たちは紛れもなく被害者だ。巷では、「スカート内盗撮」に該当する用語がなく、アップスカーティングという英語をそのまま借用しているところに、この種の性犯罪に対するドイツ人のそもそもの関心の薄さが表れていると指摘する声もある。

(参考記事)英でスカート内盗撮を処罰する法律が施行

今月にも法案提出の動き

ドイツ刑法にセクシャル・ハラスメントに関する条項が盛り込まれたのは、実は比較的最近だ。2016年の大晦日、ケルンで何百もの性的暴行被害が報告されたのを受けてのことだ。ただし、この法が適用されるのは、秘部への身体的接触があった場合に限られる。また、盗撮に関しても、罰せられるのは録画をアップして拡散した場合だ。しかも、自宅やトイレなどの私的空間で撮影されたものでなくてはならず、公共の場で撮影されたものはこの限りではない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪政府が予算案発表、新たな減税盛り込む 財政収支は

ワールド

独IFO指数、3月は86.7に上昇 景気回復期待高

ワールド

米ロ、サウジの会合の結果を分析中=ロシア大統領府

ビジネス

米個人消費が鈍化、物価高や経済見通し悪化で
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 3

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…

  • 3

    「日本のハイジ」を通しスイスという国が受容されて…

  • 4

    「指を入れるのが好きじゃない」...フランス発ベスト…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs

特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs

2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う