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この映画を見て腹が立つなら自問したほうがいい。黒人と白人の友情が直面した現実

Oakland Raiders

2019年08月30日(金)18時20分
アンナ・メンタ

最高のバディー ( 左から)ディグス、カザル 、共演者たち TOMMASO BODDI/GETTY IMAGES FOR IMDB

<人種と貧富の差が混在するベイエリアを舞台に米社会の盲点を問う『ブラインドスポッティング』>

今から10年前、ダビード・ディグスとラファエル・カザルはシナリオ作成ソフトの海賊版の画面をのぞき込んでいた。

HBOの詩の朗読番組『デフ・ポエトリー』に出演したカザルの元に、映画の依頼が舞い込んだのだ。パフォーマー兼プロデューサーで脚本も書くカザルは、親友で俳優兼ラッパーのディグスを誘った。

物語の舞台は自分たちが育ったカリフォルニア州オークランドしかないと、2人は考えた。彼らが選んだテーマは、当時はあまりに悲劇的だった。

「オスカー・グラントが殺されたフルートベール駅は、僕が住んでいた所の数ブロック先だった」と、ディグスは言う。

09年の元日の早朝、22歳の黒人青年グラントは丸腰だったにもかかわらず、白人警官に射殺された。事件後は抗議運動が続き、13年にライアン・クーグラー監督が映画化(『フルートベール駅で』)している。

【参考記事】元旦明けの深夜2時、拳銃で撃ち抜かれたオスカー・グラント

ただしクーグラーと違って、2人は自分たちの政治的主張をブラックユーモアでくるもうと考えた。「あまりに多くのコメディーが、笑えるネタでない限り人種問題を無視している」と、カザルは言う。「バディー(相棒)のコメディーを書きたかったが、その彼らが生きている世界を無視したくなかった」

それから8年近くを経て、『ブラインドスポッティング』が完成した。「ゴーサインが出て、いざ始めようとすると、話が消えてなくなるんだ」と、映画ビジネスの洗礼を受けたディグスは笑う。

プロデューサーのジェシカとキース・カルダー夫妻は当初、デジタル一眼レフカメラで撮影して予算は30万ドルと提示した。監督も決まった。

しかし、カルダー夫妻はプロダクションを立ち上げたばかりで多忙を極めていた。仕切り直しを3回繰り返した後、心が折れたディグスとカザルは「この映画の話は二度としたくない」と告げた。

トランプ時代の今だから

カルダーは諦めず、15年に企画を再開させようとした。ただし、このときディグスはミュージカル『ハミルトン』の出演が決まったばかりだった。彼はカルダーに「3カ月で終わるはずだ」と言った。

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