フランスで同時期に同地域で、腕や手のない赤ちゃんが生まれた謎
(写真はイメージ)encrier-iStock
<昨年秋に放送されたテレビ番組をきっかけに、フランスで動揺が広まっている。2000年以降、特定地域で先天性横軸形成障害の子供が生まれた原因は解明されていないが、疑わしいのは......>
2000年以降、フランスの3つの地域に集中して、腕や手に先天異常がある赤ちゃんが生まれた。この事態が昨年末から仏メディアで報じられ、国民に動揺が広がっている。
これらの先天異常が確認された3地方は、いずれも農村地域だ。仏東部、スイスに近いエン県では2000年~2014年にかけて、18件の先天性横軸形成障害が確認された。一方で、フランス北部、ブルターニュ地方のモルビハン県でも2011年~2013年にかけて4件、ロワール=アトランティック県のムゼイユ市でも2007年~2008年にかけて3人の新生児が腕や手の先天異常を持って生まれたことが報告されている。
先天性横軸形成障害とは、上腕もしくは前腕から末梢が欠損している先天性疾患だ。ル・モンド紙の報道によると、この症状を持つ子供がフランスでは新生児1万人に対し1.7人の割合で生まれると推定されている。
原因は遺伝性、催奇形作用のある薬の使用、コカインの使用、または環境要因などがあげられる。
この事実がフランス国内で大きく取り上げられるようになったきっかけが、昨年秋に放送された、フランスの国営テレビ「フランス2」の番組だ。同番組では、ローヌ・アルプ先天性奇形登録機関(REMERA)の調査報告書によって明らかになった、エン県での腕や手に先天異常がある赤ちゃんが生まれた症例を紹介した。
一方で、REMERAは連帯・保健省管轄下の仏公衆衛生当局にこの調査報告書を送ったが、返信が来たのは2年後、その後もすぐに当局が行動を起こすことはなかったという。このエン県での症例がメディアで報道をされてから、昨年末にようやく政府が全国規模の調査を開始した。
その後、医療・科学分野の専門家も加わったこの調査の結果が今年7月に発表されたが、原因究明には至らず、活動家や保護者から「表面的な調査」だと批判の声が上がった。
農薬の可能性も
REMERAの報告によると、エン県の先天性横軸形成障害を持つ子供の母親への調査を行った結果、遺伝的、染色体異常、薬害やコカイン使用などは確認ができなかった。そのため、農薬の使用、水道水の水質汚染など、環境要因の可能性が考慮されている。