パリに開店した3ツ星シェフの「無料レストラン」にボランティアとして潜入したら...
世界遺産の教会の地下で、路上生活者に「ラグジュアリー」を提供
パリ中心部、高級ブランド店やホテルが軒を連ねるエレガントな地区にそびえ立つマデレーヌ寺院。この教会の地階にレストラン、「レフェットリオ」がある。
マドレーヌ寺院のわきにある、Refettorioの入り口(Photo:Ayana Nishikawa)
同レストランを展開したのは、ミシュラン3ツ星シェフのマッシモ・ボットゥーラだ。同氏はイタリア北部モデナで高級レストランを経営し、「世界のベストレストラン50」で世界一にも選ばれた。内装のインスタレーションを手掛けたのは、世界的に注目されているフランス人アーティストJRだ。さらに月に数回、ゲストシェフとしてセレブリティシェフが訪れる。
3ツ星シェフ、マッシモ・ボットゥーラ(左)と若手アーティストJR(右)(Photo: Refettorio)
ゲストはホームレスや難民、移民など貧困生活を送っている人たち。レストランの目的は恵まれない人たちに「尊厳」を取り戻してもらうことだ。
教会の側面にある小さな入り口から地階へ進むと、石造りの空間が広がる。午後6時、この日集まったボランティアたちと丁寧にテーブルセッティングをしていく。各テーブルにはお洒落なランプの照明が照らされ、届いたばかりの新鮮な花がレストランに飾られる。
アーティストJRが手掛けたインスタレーション。(Photo: Refettorio)
この日集まったボランティアは約15人。大学で法律を教える教授、広告業界で働く女性、某高級ファッションブランド勤務の女性、難民としてパリに来たシリア人学生など、年齢層も職種も幅広いバックグラウンドから来た人たちだ。週2、3日ボランティアとして参加しているという30代の女性は「とてもいい雰囲気なの。働いている私が幸せな気持ちになる」と笑顔で語る。
午後18時20分、開店間近になるとゲストを最上のおもてなしで迎えるため、リーダーが緊迫した様子で、すべて完璧に準備が整っているか確認をする。
この日のメニューは前菜がフレンチトーストのズッキーニ添え、メインが鶏肉と野菜の煮込み、デザートがクレームの赤い果実添えだ。
同レストランではフードウェイスト(食糧廃棄)を減らすことにも取り組んでおり、食材は契約したスーパーなどから、本来はまだ食べられるのに廃棄されてしまう賞味期限間際の材料を集めてくる。
取材当日の前菜とメイン。賞味期限間際の食材を使用している。(Photo: Ayana Nishikawa)