いじめは減ったのか? 男女の区別をなくすイギリスの学校の取り組み、その実情とは
また、彼らはスカートの廃止にも反対だ。特に体は男子でも心は女子、というトランス生徒は、全校生ズボン着用となった共学校で「自分が着たいのはスカートなのに...」と訴えた。かたや女性がズボンを履くことを好まない宗教の信徒家族は、娘を転校させるべきかで悩んでいる。こうして生徒や保護者たちの声を聞いていると、「教育の現場は混乱している」という印象を受ける。
教育研究家のジョアンナ・ウィリアムズ博士は、ジェンダーニュートラルにこだわりすぎることで、子供達が自分のセクシュアリティーについて混乱する危険性を英インディペンデント紙のインタビューの中で訴えている。
この5、6年の間に、性転換手術を希望する未成年の数は10倍近くに増えたそうだ。その中には、真剣に性不一致に悩む子供達に混じって、友達の注目を得ようと「私って本当は男性(女性)だと思う」と言ってみたというケースも。英ミラー紙によれば、相談年齢も6歳くらいまで下がっているという。(注:転換手術を受けられるのは18歳から)
ジェンダーニュートラルなトイレや制服が、肌の色、宗教、性的志向、心と体の障害...とお互いの「違い」を認め合って受け入れ、共生できる社会を実現するための一歩であることは確かだ。しかし、マイノリティーが安心して学べる環境を、と一口に言っても、その「マイノリティー」は、男か女かという分け方をやめただけでは到底カバーできないほど、様々な立場を抱えている。学校のような集団生活の場での取り組みは、これからも試行錯誤を経ながら続けられるのだろう。