「女性は取締役には向かない」──英調査で浮き彫りになった呆れた上役の本音と現場のリアル
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【女性疎外、女性の能力を軽視】
◎ 女性は取締役の環境にはぴったり合わないと思う。
◎ 取締役が扱う議題はものすごく複雑で、取締役に見合うだけの確かな実績や深い経験をもつ女性は多くない。
◎ ほとんどの女性は、女性取締役でいるプレッシャーを感じたくないだろう。
◎ うちには女性取締役が1人いるから、もう義務は果たした。今度はほかの企業の番だろう。
【ほかの役員などとの関係にふれて】
◎ 株主が興味ないのに、私たちが女性取締役の投入を考える必要があるだろうか。
◎ ほかの取締役たちが、女性取締役を望んでいないだろう。
◎ いまのところ、取締役に空きがない。あれば考慮するのだが。
◎ 私がそうしたいからというだけで、女性を取締役に就かせることはできない。
【女性社員の不足に言及】
◎ 優れた女性はみんな、もうほかの社で取締役になってしまっている。
◎ 上位の役職の女性の人材が十分でない。
日本の企業からも聞こえてきそうな声だと言ったら、言い過ぎだろうか。7年前の調査では、350社の女性取締役の割合は9.5%だったから全体的には改善はされてきているとはいえ、イギリスでも、一部では女性疎外の風潮はまだ強く残っている。
男女の給与格差も歴然
男性優位の考え方は、給与格差としてもあらわれている。政府平等局は、4月上旬を期限に、250人以上の雇用者を抱える9000社、そして公共団体の合計約1万から男女の給与格差のデータを集めて、実態を公表した(北アイルランドは除く)。データを提出しない場合は、上限のない罰金を科したり罪として扱うという厳しいものだった。
英ガーディアン紙は、「10社に8社のイギリスの企業が、男性により多く給与を支払っている」と題して報じた。調査は時給を比較している。フルタイムの平均格差は14.1%で前年と変化なし、パートタイムを合わせると18.4%だった。また、中央値(最小賃金から最大賃金まで並べて、真ん中に位置する額)の格差を見ると、フルタイムの差は9.1%で前年の9.4%から若干改善し、パートタイムを合わせると17.4%だった。なお、同紙独自の分析では、中央値格差で最も大きかったのは建設業の25%、金融・保険業の22%、教育の20%だった。
この調査には役職の高い人や低所得労働者は含まれていないため、完璧ではない。それでも政府は、業種別の統計を出版して、大きな給与格差の改善に取り組まない企業を浮き彫りにする手立てを考えている。
女性取締役の割合にしろ給与格差にしろ、ガラスの天井に突破口が見つかって最終的に崩れるまでには時間がかかりそうだ。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」理事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com