オバマ演説が象徴するアメリカ外交の混沌
大統領が有終の美を飾るために必要なのは原則論だけでなく実効ある政策だ
世界は見ている 妻ミシェルへの投げキッスで演説を終えるオバマ Jonathan Ernst-Reuters
先週、オバマ米大統領にとっては最後から2番目となる一般教書演説が行われた。4分の3もの時間が割かれたのは国民の関心が高く、争点のはっきりした内政問題。特に格差是正への取り組みをオバマは強調した。
対照的に、外交問題の扱いは随分軽かった。無理もない。昨今の国際政治は混乱を極め、世界におけるアメリカの役割や影響力、国益の定義もはっきりしない。「アフガニスタンにおける戦闘任務は終わり」と言いながら、同国やイラクでの米軍駐留が続いていることや、その最終的な使命や目的については触れずじまいだった。
冷戦終結後のアメリカ外交の原則についての説明はよくできていた。「情報に振り回された性急な判断」を慎み、「問題が発生してもすぐには」派兵せず、「軍事力を背景に外交努力を重ね」「他国との協調体制をテコにする」と言う。
だが、オバマがアメリカの国力と外交力、結束力を総動員して対処したはずの紛争では、思わしい結果は出ていない。確かにアメリカは空爆を先導し、イスラム教スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)のジハーディスト(聖戦士)がイラクやシリアで勢力を拡大していくのを「食い止めつつある」。しかし、これらの国々について最終的に何を目標としているのかは見えない。
シリアでは敵の敵も敵?
オバマはISISと戦う一方、同じくISISと戦うシリアのアサド政権とは対立している。「シリアの穏健な反体制派への支援」も表明しているが、経験の浅い反体制派兵士が殺戮されるのは傍観していた。そこには明確な戦略は存在せず、引き延ばし戦術があるだけだ。
「幅広い協調体制にはアラブ諸国も含む」とオバマは言うが、それも心もとない。アメリカと国益が著しく異なる国々もあり、足並みはそろわないのだから。
さらに「大国の小国いじめは許さない」という原則から、ロシアの軍事介入に抵抗するウクライナへの支持を表明。欧米が一致団結して行っている制裁の効果もあってプーチン大統領は孤立し、ロシア経済は窮地に立たされているとした(実は原油安の影響が大きいのだが)。