オバマ演説が象徴するアメリカ外交の混沌
2015年2月3日(火)15時59分
しかし世界に目を向ければ、勇ましい言葉もむなしく響く。シリアやエジプトやアフリカの国々で続く暴力や弾圧にアメリカはほとんど打つ手がない。
筋が通った外交政策もある。キューバに対する制裁解除は当然だろう。イランとの核交渉には大きな進展があり、「核開発計画を中止させ、核物質保有量を削減させた」とオバマは述べた。その上で、もし議会で追加制裁法案が可決される事態になれば「外交努力は確実に水泡に帰す」とし、拒否権を行使すると明言した。
「世界中から非難を浴び、テロリストの勢力拡大の口実になっている」グアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容所の閉鎖に触れると、議場には不気味な静寂が広がった。ブッシュ前政権で行われていた拷問を禁止すると宣言した際にも、拍手はまばらだった。
ここがアメリカ外交の情けないところだ。特定の重要な課題、特に予算が絡むとなると、議会が進展を阻む。最近の議会は極めて偏狭でタカ派的だ。オバマが演説であまり外交問題に触れないのも不思議ではない。
しかし、好むと好まざるとにかかわらず、アメリカは今後も世界に関わっていかなければならない。
© 2015, Slate
[2015年2月 3日号掲載]
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