最新記事

超大国

アメリカなき世界に迫る混沌の時代【後編】

2014年4月23日(水)12時40分
★ウィリアム・ドブソン(スレート誌政治・外交担当エディター)

 一方、アメリカ国内は平穏だ。オバマは退任間近の時期に入り、支持率も民主党をまとめる力も低下している。民主党は14年の上下両院選挙で、負けをどこまで抑えられるかが試されるはずだ。第二次大戦以降、大統領在任6年目の中間選挙で政権与党は平均して下院で29座席、上院で約6議席を失っている。

 アメリカが外国で新たな冒険を始めることもないだろう。オバマにとって14年の最優先事項は世界に対するアメリカの関与の縮小だ。具体的にはアフガニスタンから米軍を撤退させ、解決不能な問題を抱える中東から距離を置くことだ。

 過去10年、アメリカの他国への介入がさまざまな結果を生んだことを考えれば、それを避けようとするのも理解できる。10年以上にわたるアフガニスタンとイラクにおける戦闘で多大な国費を使ったと、アメリカ国民は感じている。テロなどの予測不能な攻撃を受けないためにアメリカは世界の舞台から遠ざかり、喜んで傍観者となるだろう。

 しかし少なくとも冷戦以前からの数十年で、今ほど世界的な騒乱の危機にあったことはない。アメリカなき世界では、混乱の可能性は飛躍的に高まる。アメリカは困難から逃げるのか対処しようとするのか、その問いに答えるのはアメリカ人自身だ。

 なぜ世界の主導的役割を果たすべきかをアメリカ国民に説明することは、以前ほど簡単ではない。ソ連の脅威を喧伝できた冷戦時代はもっと単純だった。
アメリカのある世界、なき世界はあらかじめ決められたものではなく、選択の問題だ。アメリカがこの単純な真実を思い出し、そして他の国々がそれを受け入れるのに新たな悲劇を必要としなければいいのだが。

[2013年12月31日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国の尹政権、補正予算を来年初めに検討 消費・成長

ビジネス

トランプ氏の関税・減税政策、評価は詳細判明後=IM

ビジネス

中国アリババ、国内外EC事業を単一部門に統合 競争

ビジネス

嶋田元経産次官、ラピダスの特別参与就任は事実=武藤
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中