歴史を作るオバマ2期目のシナリオ
84年のレーガン再選を可能にしたのは景気の回復とインフレ率の低下だったが、彼を伝説的な存在に押し上げたのは2期目の成果だ。成長の持続と東西冷戦の終結、86年の税制・移民制度改革が、大統領レーガンの名を不滅のものにした。
レーガン政治はアメリカを大きく変えた。税制改革による所得税率の幅は今も、そしてオバマによる最高税率引き上げが実現してもレーガン時代の範囲に収まる。また、レーガンの移民制度改革はアメリカ社会の民族構成を、ひいては有権者の構成を変えた。
そして後継者ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の下でソ連・東欧圏が崩壊し、レーガンの遺産は完成された。もちろんレーガンがすべてを独力で成し遂げたわけではない。だが変化を呼び込んだのは彼自身だ。
オバマの1期目はレーガンのそれにとても似ている。早々に景気刺激策と国民皆保険という2つの大きな勝利を収めたが、それが中間選挙では重荷になり、レーガンのときよりも大きな敗北を味わった。そして野党はずっと非妥協的になった。
レーガンは最初の大きな成果である減税法案の採決で、上院で民主党議員37人の賛成票を獲得できた。一方、オバマ政権の最初の成果である景気刺激策の場合、共和党議員の賛成票は下院でゼロ、上院でも3。今のアメリカが二極化している証拠だ。
とはいえ中間選挙後もオバマは実績を築いてきた。アルカイダを弱体化させ、ジョージ・W・ブッシュが夢見たアラブ世界の民主革命も始まった。08年の危機を招いた金融業界への規制強化やクリーンエネルギーへの積極的な投資もある。自動車の燃費基準を厳しくし、輸入石油への依存も減らした。
あと4年の時間があれば、オバマはもっと先まで行ける。第1に、国民皆保険をひっくり返すことは不可能になる。65年にメディケア(高齢者医療保険制度)が成立して以来、アメリカの医療制度における最大の変化が実現するわけだ。
目前に迫る「財政の崖」
再選後のオバマは30年来の歳入と歳出の不均衡に終止符を打つだろう。今年の12月末までに民主党と共和党が合意しなければ、防衛関連支出と社会福祉給付が自動的に削減され、ブッシュ減税措置も終了するいわゆる「財政の崖」が訪れる。
オバマは先に財政赤字削減のための超党派特別委員会の提案を受け、歳出削減の幅を大きくし、増税を最小限にする方向の解決策を受け入れている。だが共和党はいかなる増税案も突っぱねてきた。
これでオバマが再選を決めれば、共和党も増税絶対反対の姿勢を維持しにくくなる。妥協を拒めば「財政の崖」を許すことになるからだ。
それでも共和党は妥協しないかもしれない。11月の下院選で多少の議席を失っても、残った議員は選挙に強く、より非妥協的なメンバーになるからだ。だがオバマに2度目の大きな敗北を喫した後では、さすがの超右派も妥協の重要さに気付くのではないか。
あるいは国防費削減の危機感が彼らを動かすかもしれない。実はそれこそがオバマの待ちに待った瞬間だ。