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米大統領選「ハゲタカ」ロムニー躍進でウォール街の災難
共和党の大統領選予備選で飛び出したロムニーの未公開株投資業界での経歴に対する「ハゲタカ」批判が、業界の思わぬ逆風に
トップ候補 ビジネスの経歴を武器にニューハンプシャー州の予備選も制したロムニーだが Adam Hunger-Reuters
米共和党の大統領選予備選でトップに躍り出たミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が、選挙戦で売りにしているポイントは2つある。
1)私は経済とビジネスの仕組みを熟知している。共同創業したプライベート・エクイティ(未公開株)企業「ベインキャピタル」での経験によるところが大きい。
2)私はオバマ大統領に勝てる。
ロムニーがニューハンプシャー州の予備選で勝利した後、他の候補者たちはこぞって、彼の第1の売りを逆手に取ろうと躍起になっている。それが奏効すれば、2つ目のポイントはおのずと弱まることになる。
興味深いのが、ニューヨークタイムズの最近の記事だ。それによれば、プライベート・エクイティ業界の関係者たちの間に、こうしたロムニー批判が業界全体のイメージダウンにつながるのではないかという懸念が広がっているという。
プライベート・エクイティ業界の人間は、ロムニーが主張するようなアメリカ経済の「良きリーダー」などではなく、対抗馬のニュート・ギングリッチ元下院議長やテキサス州知事リック・ペリーが糾弾するとおり、企業を食い物にして雇用を破壊する「ハゲタカ」だという結論に世論が傾いてしまったらどうするのか。
こうした懸念は、金融業界によるロムニー支持にも影響を与えかねない。特に25年前の映画『ウォール街』ですっかり「強欲」なイメージを植えつけられたプライベート・エクイティ業界はどう反応するだろう。
ニューヨーク・タイムズはこう書いている。
企業買収でのし上がってきた多くの経営者たち、特に大金を投じて長年共和党を支持してきた人々は、今回のロムニー批判に戸惑いを隠せない。ロムニーの対抗馬たちは、まるで予備選をロムニーのビジネスキャリアに対する国民投票のように扱っている。おかげでプライベート・エクイティ業界は、これまで友人だとばかり思っていた人々からも攻め立てられる羽目に陥っている。
「こういう事態は覚悟していたが、まだ本選になってもいないのにこれほどとは」と、あるプライベート・エクイティ業界幹部は匿名で語っている。「今後、批判はもっと高まるだろう」
プライベート・エクイティの業界ロビー団体は、ロムニー批判の巻き添えで被るダメージを低減するために、イメージキャンペーンを展開することにしている。
だがこの問題は、もっと深刻化するかもしれない。
「ウォール街占拠運動」から見て取れるように、拡大する格差への不満は米社会に蔓延している。そしてもちろん、怒りの矛先はウォール街に向けられている。
確かにロムニーは今でも選挙戦を有利に進めている。昨年10〜12月には2400万ドルもの選挙資金を集めた。彼は資金提供者たちに、富裕層の大幅減税という形で大きな「恩返し」をすると公約している。
しかしロムニーへの「ハゲタカ」批判が激しくなり、予備選の舞台がより保守的なサウスカロライナ州へと移る中で、ロムニーは難しい立場に追い込まれようとしている。ウォール街のプライベート・エクイティ業界も同様だ。