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兵士を見殺しにしたあの国防長官

アフガニスタンとイラクの2つの戦争の民生支援で予備役兵を犠牲にしたラムズフェルドの大罪

2011年2月24日(木)12時28分
マーク・ベンジャミン、バーバラ・スラビン(センター・フォー・パブリック・インテグリティー)

許されざる過去 ラムズフェルドの高邁なスローガンは口先だけだった David Hume Kennerly/Getty Images

 これは「今までとは違う戦争になる」。アメリカの国防長官ドナルド・ラムズフェルドはそう豪語していた。米軍はアフガニスタンで解放者として戦うのだと、2001年9月11日のテロ直後にラムズフェルドは宣言している。

 そのために動員されたのが、予備役の民事部隊。弁護士から大工まで、普段は一般市民としてさまざまな仕事に従事している予備役兵を戦地に派遣し、インフラ整備などの民生支援に当たらせ、米軍の好感度を上げる作戦だった。

「テロ支援国の政府に軍事的制裁を加えつつ、抑圧されている国民を味方に付けてみせる」。ラムズフェルドは01年9月27日の演説でそう言った。その数日後にはテレビ番組に出演し、「アフガニスタンの人々を助けるためなら何でもやる」と言い切っている。

 こうして新たな戦いが始まった。だが、ラムズフェルドにはこの戦いを本気で戦う気などさらさらなかった。本人の回顧録『知っていることと知らないこと』を読めば明らかだ。「よその国で道路を敷設し、治安を回復することが米軍の任務だとは思わない......そこまでアメリカに依存されては困る」

 ラムズフェルドの奇麗事の口約束と過酷な現実。その板挟みで犠牲を払ったのが民事部隊だ。国政を監視する団体センター・フォー・パブリック・インテグリティーが入手した文書によれば、彼らは訓練も装備も不十分なまま前線に送られ、戦闘に巻き込まれ、命を落としている。...本文続く

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