米下院議員を銃撃した男の心の闇
犯罪ドラマの見すぎが遠因?
ミラーはラフナーから連絡を受けたことはないが、「彼は私のサイトを見たと思う」とコメント。「彼は私が過去11年間、サイトで書いてきたことを繰り返しているだけだ」
ミラーに言わせれば、ラフナーは空軍のマインドコントロール計画の犠牲者かもしれない(99年のコロンバイン高校銃乱射事件の犯人たちと同様に「計画に参加するのに十分な年齢に達していた」からだとか)。ただし、ラフナーに最も影響を与えたのはテレビの犯罪ドラマだともいう。「犯罪ドラマは連日、一週間に100回も殺人について教えている。彼らは20年間に渡って子供たちを洗脳してきた。狂っていない人がいるほうが驚きだ」
ジョージ・オーウェルやヒトラーの『我が闘争』を含むラフナーの愛読書リストを調べたポトクは、すべての作品に反政府的な要素が貫かれていると指摘する。さらに、「良心的な空想すること(conscience dream)が好きだ」というラフナーの記述は「意識的な空想(conscious dreaming)」のスペルミスの可能性があり、そうだとすればイギリスの陰謀論者デービッド・アイクが主張してきたことと合致するという。「意識的な空想という概念は理解できないが、要は我々が現実だと思っているものは勘違いだ、という考え方だ」と、ポトクは言う。
ラフナーがこの思想を信奉していたとすれば、『不思議の国のアリス』などのファンタジーが愛読書リストに含まれていたのも理解できる。「精神疾患をかかえた男が痛烈な言葉を大量に耳にするうちに、一部を信じ込んでしまった可能性が高い」と、ポトクは言う。
結局、精神疾患に政治的な怒りが入り混じったために、一線を越えて凶行に走ったということなのだろうか。「私が入手した情報や、彼の投稿に表れている怒りと被害妄想から判断するかぎり、彼は妄想様観念か偏執性妄想を患っていたように思える」と語るのは、ギフォーズと親交がある医師でアリゾナ州下院議員のマット・ハインズ(33)。「偏執性妄想の患者はこの州の厳しい政治状況に、普通とは異なる反応をする。『医療制度に関するあなたの考え方に反対です』と言う代わりに、『お前は死ね』となる」