米消費復活、それも「支払いは現金で」
カードの利用が減って小売売上高が増えているのは、健全な消費と強いアメリカ経済が戻ってきた証拠
学習効果 借金バブルで懲りた消費者は、買い物にあまりカードを使わなくなった Robert Galbraith-Reuters
先週はアメリカ経済の悲観論者が注目するような、消費に関する「2つの悪いニュース」が流れた。FRB(米連邦準備理事会)は7月8日、アメリカの消費者信用残高が2009年に4.4%減少し、今年5月には年率比で4.5%減少したと発表。クレジットカードなどのリボルビング払いの残高は09年に9.6%減少し、今年5月には年率比10.5%も減少した。
同じ8日、今年6月の小売売上高も振るわなかったことがわかった。米調査会社トムソン・ロイターによる小売28社を対象にした調査では、「既存店売上高は3.1%しか増加していない」と、ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。「昨年4.9%減少したことを考えればそれよりはましだが、思ったほど堅調ではない」
しかし私は、この2つがなぜ悪いニュースと言われるのかわからない。確かに消費を促進するリボルビングの利用額は大きく減少しているが、小売の売上高自体は昨年の同時期より増えている。アメリカの消費者が買い物を増やしている、しかも借金をせずに現金や貯蓄を使って、という事実は経済の弱さではなく強さの証拠とみなされるべきだ。
FRBが毎月発表するリボルビング利用残高が大幅に下がっていることは間違いない。今年5月の残高は8308億ドル。09年5月の9280億ドルから減少し、ピークだった08年第3四半期の9760億ドルと比べれば15%(1450億ドル)も落ち込んでいる。
雇用状況の改善も大きい
リボルビング残高は滞納金の貸倒償却額、借り手が返済した額、新たな借り入れ額の3つの要因に左右される。しかし最近の残高減少に、貸倒償却(通常、返済が3カ月滞ると適用される)が寄与している割合はほんのわずかだ。全米銀行協会(ABA)のまとめによると、アメリカの銀行は09年に375億ドルのクレジットカード債権をもう返ってこない損金として償却している。調査会社ムーディーズ・エコノミー・ドットコムの主任エコノミスト、マーク・ザンディは、今回こうしたクレジットの貸倒償却はリボルビング残高減少分の4分の1でしかないと指摘する。
ABAの主任エコノミスト、キース・レゲットは、貸倒償却の件数はピークを越えたとみている。ABAは7月7日、銀行クレジットカードの滞納率が第1四半期に3.88%まで急減したと報告した。滞納率が4%を割ったのは02年第2四半期以来のことだ(ここで言う滞納とは30日以上支払いが遅れること)。
銀行クレジットカードの滞納率は、09年第2四半期の5.01%がピークだったようだ。「様々な材料から判断すると、クレジットの貸倒償却は安定してきていて、今後は緩やかに改善するのではないか。これは経済が拡大しているおかげだ」と、レゲットは語る。
実際、アメリカ経済の回復は2年目に入っている。季節調整済みの雇用統計を見れば、09年6月には1億3064万人、今年6月には1億3047万人が職に就いている。次の雇用統計がひどい数字にならなければ、昨年よりも雇用状況は改善していると言えそうだ
借金に頼らなくなった消費者
この変化がおそらく、借り入れの返済状況が改善している理由の1つだろう。ムーディーズのザンディは、リボルビング残高減少分の約4分の1は繰り上げ返済のおかげだとみている。これも良いニュースだ。借金が減ることは好循環を生み出す。
FRBの発表によれば、今年5月のクレジットカードの利率は14.4%だ(一括払いでない場合)。もし利用残高が1年前より1000億ドル減れば、アメリカ人が支払う利息は144億ドル減ることになる。そして、144億ドル余計に買い物に使うことができる。