ズバリ言おう、オバマ叩きは人種問題だ
ポスト人種主義の幻想
人種問題を口にすることさえはばかる姿勢は、世界をありのままに報じることを求められているジャーナリストと読者の溝を広げる。だから風刺ニュース番組『デーリー・ショー』や有力政治ブログの「ハフィントン・ポスト」といった、人種差別主義者のごまかしを暴くのが好きな非主流メディアに人気が集まるわけだ。
ともあれアフリカ系初の大統領誕生は、人種問題を教える絶好の機会である。私は決して楽観していないが、オバマ当選でアメリカから差別がなくなったという「ポスト人種主義」や、「人種間の友愛」が生まれたなどと考えるよりはましだ。人種を超えて愛されるテレビ司会者のオプラ・ウィンフリーや俳優のウィル・スミスは例外。この国は肌の色で人を判断する悪癖からいまだに脱していない。
人種問題を語ることは怖い。自宅以外で、自分の意見を実名で言う勇気のある人は少ない。人種問題を論じる不快さに正面から取り組む代わりに、われわれは差別用語を避けるという時代遅れのやり方でお茶を濁すか、口をつぐんできた。しゃべらなければ問題が消えるとでもいうように。
たとえ善意の沈黙でも、黙っていたのでは議論には勝てない。狂信的な主張がその空白を埋めるのを許すだけだ。議論を怠れば、人種の平等は実現するどころか、逆に破壊されてしまう。
[2009年9月30日号掲載]