最新記事

アフガニスタン戦略

増派決断の遅れはオバマの命取りに

2009年10月9日(金)17時11分
ホリー・ベイリー(ホワイトハウス担当)

 オバマは大統領選挙戦の間、アフガニスタンを「忘れ去られた戦争」と繰り返し表現した。ブッシュ政権が不当にこの地域を軽視していると意思表示するものだった。さらに、米国民がアフガニスタン情勢の危険性を完全には理解していないとの懸念もあらわにしていた。

 オバマが今こうした議論を持ち出すのは難しいのだろう。国民がアフガニスタン情勢への理解を深めれば、オバマが必要とする戦争への支持を得られなくなる可能性もある。

 ギャロップ社の最近の調査によれば、回答者の61%が戦争はうまくいっていないと考えており、37%は戦争は「失敗」だと考えている。別の調査では、過半数を超える人がアフガニスタン戦争は「戦う価値がない」と答えている。

 オバマ政権がマクリスタル報告への回答を示さない状況では、高まる反戦ムードを抑えることはできないだろう。

ブッシュの失敗を反面教師に

 さらに議会からの圧力もある。共和党のジョン・マケイン上院議員らは、ホワイトハウスに残された時間は少ないと主張。一方の民主党も、ラッセル・ファインゴールド上院議員などがオバマは撤退の行程表を示すべきだと提案している。

 オバマがブッシュのイラク戦争から学ぶものがあるとしたら、戦略決定に時間を掛け過ぎないということだ。ブッシュの増派の決断は最終的には正しかったと見なされたものの、彼の支持率が再び上昇することはなく、残りの就任期間にも暗い影を落とし続けた。

 オバマはそれを念頭に置いたほうがいい。今年の夏にホワイトハウスを訪問した歴史家たちに、オバマはアフガニスタンが自分の大統領生命を吸い取るかもしれないと語っている

 現在のところ、オバマがブッシュのように時間稼ぎをしている兆候はない。だがホワイトハウスは1日が過ぎるたびに、世間の支持を少しずつ失っている。アフガニスタンのような予測不能な戦争では、失ったものを取り戻すのは簡単ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感11月確報値、71.8に上

ワールド

レバノン南部で医療従事者5人死亡、国連基地への攻撃

ビジネス

物価安定が最重要、必要ならマイナス金利復活も=スイ

ワールド

トランプ氏への量刑言い渡し延期、米NY地裁 不倫口
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中