最新記事

米政治

オバマ医療保険改革演説の通信簿

2009年9月11日(金)18時13分
ケイティー・コノリー(ワシントン支局)

■今こそ自分のプランを示せ(評価:A)

 公的医療保険制度はさておき、オバマは法案に何を盛り込むか、財源をどうするかといった詳細を明示した。貧困層対象の税控除、適切な医療保険を探す「保険取引所」の設置、メディケア(高齢者医療保険制度)の保護など。オバマが描いているのは予算9000億ドルの政策で、財源不足は生じない。この種の演説では、これ以上包括的なプランは語れないだろう。

■大統領選のときのようなメッセージ統制力(評価:未定)

 今回の演説がオバマの草の根の支持者にどう受け止められるかは、もう少し時間が経たないと分からない。しかし、公的医療保険制度を擁護したことに好感をもつ支持者は少なくないだろう。

■「人種演説」の魔法を再現する(評価:A-)

 本誌は演説前のアドバイスで、オバマは議論の流れを変える必要があると提案した。しかし今回の演説の内容は、以前から訴えていたことばかりだった。とはいえ、自分の考えを包括的にまとめ、説得力のある演説に仕上げた。

 終盤でオバマは、先日亡くなったエドワード・ケネディ上院議員からの手紙を読み上げ、医療保険改革は「リベラリズムを守るための使命」だと訴えかけた。

 最後には、人々の心を揺さぶる言葉の力をフルに発揮し、こう語りかけた。「事実や理性をないがしろにして、本当に重要な事柄を国家の一員として話し合うことができなければ、我々は大きな問題を解決する力を失うだけでなく、本質的な何かを失うことになる」

 保守的なトークショーのファンはこれでは喜ばないだろうが、オバマの支持層には強く響いたはずだ。大統領選の流れを変えた「人種演説」ほどの威力はないかもしれないが、医療保険に関するスピーチとしては満点に近いだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド政府、経済成長率6.5%程度と予想 従来見通

ワールド

トルコ中銀2.5%利下げ、主要金利47.5% 「イ

ビジネス

米新規失業保険申請は1000件減の21.9万件、1

ワールド

イスラエル、イエメンのフーシ派関連施設を攻撃 空港
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部の燃料施設で「大爆発」 ウクライナが「大規模ドローン攻撃」展開
  • 4
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 5
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 8
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 9
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 10
    世界がまだ知らない注目の中国軍人・張又俠...粛清を…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中