瀕死の医療保険改革を救う6つの提案
■今こそ自分のプランを示すとき
オバマは改革の大枠を示したうえで、詳細は議会に任せた。そのため議会では今、複数の改革案が浮上している。一つの案にまとまらないまま夏季休暇に入ったため、議員たちは熱気あふれる地元の対話集会で、具体的な回答が出来ずにばつの悪い思いをした。
苦い思いをした議員たちが戻って議会が再開されたら、オバマがリーダーシップを発揮するチャンスだ。「クリントン(元大統領)のように最初から独自のプランを出すと、『そんなの駄目だ。もっといい方法がある』と言われる」と、都市問題研究所のロバート・ライシャワー所長は言う。彼いわく、「まず(議会に)やらせて難しさを分からせた」うえで、自分のプランを出すのがカギだ。
■大統領選のメッセージ統制力を
オバマ人気が絶頂に達したのは大統領選のときだ。オバマ陣営は、膨大な数の支持者に最新情報をメールして一体感を演出。さらに主流メディアからブログ、ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)まで、あらゆる手を使ってオバマのメッセージを伝えた。
そうした統制の取れたアプローチが、医療保険改革をめぐる取り組みでは見られない。顧問たちはあやふやなメッセージを発信し、議会の民主党議員は改革案のあらゆる点を言い争っている。党全体でメッセージを一貫させられれば、混乱は抑まり、オバマの立場もぐっと強くなるだろう。
草の根運動の活性化も重要だ。幸い、大統領選でオバマ陣営が集めた膨大な支持者のデータベースは、オバマの非営利団体「オーガナイジング・フォー・アメリカ」が持っている。すでに彼らは静かに支持者集めや集会、バスツアーを始めている。9月中にこうした動きが盛り上がるのを期待しよう。
■「人種演説」の魔法を再現する
大統領選の予備選中に、オバマが通っていた教会のジェレミア・ライト牧師の過激な言動が全米のテレビ局で流れたとき、これで万事休すかとオバマ支持者は気をもんだ。そんなときオバマは「あの演説」をした。アメリカの人種について自分の経験を織り交ぜた演説は、ライトをめぐる議論の流れを変えた。
オバマは医療保険改革でも同じことを成し遂げる必要がある。「(オバマは)ライオンの巣に飛び込んで、ライオンに魔法をかけなくてはいけない」と、広告代理店ドイチのエリック・ハーシュバーグ社長は言う。
オバマの人種演説が大きな効果を発揮したのは、問題に正面から向き合って自分の考えをパワフルかつ雄弁に述べたからだと、ハーシュバーグは言う。9日は再びその魔法を繰り出して、医療保険改革にうんざりした国民を味方につける最後のチャンスかもしれない。