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極右過激派の「見えない」脅威

2009年6月18日(木)15時16分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

 6月10日、ワシントンのホロコースト博物館で警備員が射殺される事件が勃発。容疑者として白人至上主義者ジェームズ・ボンブリュン(88)が逮捕された。しかし皮肉にも同じ日、アメリカで「武装集団」の動きが再び活発化していると警告するリポートが撤回された。

 同リポートは、今年2月にミズーリ州情報分析センターが出したもの。同センターは9・11テロ後に市、州、連邦の各機関が情報を共有し合うために設立された。

 撤回の理由は、保守系の政治活動家が自分たちの評判に傷がつくことを恐れて反発したからだ。4月には、右派の論客ラッシュ・リンボーが仲間と共に米国土安全保障省に対して執拗に抗議し、極右の過激派が台頭しているというリポートの発表を断念させている。

 アメリカでの極右過激派の動きについて、今はあまり表立って語られていない。しかし警察や情報機関の関係者はニューズウィークに対し、イスラム過激派と同様に極右過激派の活動にも注意深く目を光らせていると認めた。

 しかも彼らの脅威はアメリカ国内にとどまらない。ボンブリュンは「イギリス国民党(BNP)のアメリカの友人たち」という団体の集会に出席したことがあるという。同団体は現在は活動停止しているが、以前はイギリス最大の極右政党であるBNPの資金集めを行っていた。

 BNPの党首で、かつてホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の存在を否定したニック・グリフィンは、先頃行われた欧州議会議員選挙で議席を獲得。アメリカにも定期的に訪れ、極右団体を相手にスピーチなどを行っている。

[2009年6月24日号掲載]

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