ミシェルという存在の重さ
ホワイトハウス入りしたオバマ夫人はアメリカ社会にはびこる黒人のステレオタイプを壊し、黒人の自己イメージさえ変えるかもしれない
夫人のチェンジ アフリカ系のなかでも肌の黒いミシェルは、黒人女性のステレオタイプを打ち破りそうだ
Kevin Lamarque-Reuters
昨年11月、日曜日のロサンゼルス。教会からの帰りに私は友人たちとブランチをしながら、おしゃべりに花を咲かせた。
当然ながら話題は大統領選挙。バラク・オバマの歴史的勝利の興奮から私たちはまだ冷めていなかった。生きているうちにアフリカ系の大統領が誕生したことに、まだ驚いていた。
その場にいたのは30代と40代の黒人女性6人。私たちはオバマの勝利だけでなく、妻のミシェルがホワイトハウス入りすることにも興奮していた。
ミシェルの輝かしい学歴や個性的なスタイルを、私たちは文句なしに評価していた。少しばかり嫉妬もしていただろう。でも、みんなわかっていた。私たちが彼女に心から期待していることを。
45歳のミシェルは、ジャクリーン・ケネディ以来、最も若いファーストレディーになる。ジャクリーンと同じく、女性たちの憧れるセレブなムードのファーストレディーが生まれそうだ。
しかしミシェルがホワイトハウスに入る意味は、もっと大きい。彼女は世界で最も注目を集めるアフリカ系アメリカ人女性になる。黒人女性に対する醜いステレオタイプ(固定観念)を打ち崩し、アメリカのブラックカルチャーを世界に教えるチャンスを手にする。
いや、それだけではない。アフリカ系アメリカ人の自己イメージまでも変える力を、ミシェルは手に入れることになる。
大きなチャンスには大きな責任が伴う。「ミシェルはいつだって品良く振る舞うでしょう。自分は(アフリカ系の)代表だとわかっているから」と、おしゃべり仲間の一人で看護師のガートルード・ジャスティン(40)は言った。「自分が黒人のステレオタイプを壊す存在であり、何をしても注目されることは知っているはず」
テレビや映画に出てくる黒人女性といえば、薬物依存のふしだらな女や、毒舌家の肝っ玉母さんと決まっている。それが私たちアフリカ系女性の本当の姿ではないということを、これからミシェルは日々思い起こさせてくれる。
ミシェルも主流の白人社会で生きるために、微妙なバランス感覚を身につけなくてはならなかった。アイビーリーグの二つの大学で学位を取得し、一流の法律事務所で働いたこれまでのキャリアで、彼女は「白い社会」への溶け込み方を学んだはずだ。
いまミシェルは、さらにむずかしい課題を背負った。それは、アフリカ系コミュニティーにも、それ以外のアメリカ人にも信頼されるファーストレディーになること。その課題を、自分に嘘をつかずにやり遂げなくてはならない。