113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
Ginger Cat Mystery Solved
「オスのサビ猫や三毛猫は時に存在するが、その原因は通常、不妊を引き起こすX染色体の過剰など、性染色体数の異常だ」。シドニー大学とミズーリ大学コロンビア校の科学者らは学術系ウェブサイト、ザ・カンバセーション(The Conversation)でそう解説している。
その肝心のオレンジ遺伝子がARHGAP36だと、ようやく判明したわけだ。
日米の研究によれば、ARHGAP36の欠失という変異が、関連タンパク質の毛包発育期の働きに作用する。
ARHGAP36はオレンジ色の部分で活発な活動を続ける一方、非オレンジ色の部分ではおおむねオフ状態になる。欠失変異は問題のタンパク質を変化させないが、活動部位に大きな影響を与え、あのオレンジ色を発現させるという。
「毛色を研究すれば、細胞間の情報伝達について学ぶことができる。色素の明るさや暗さを決める色素細胞の作用は、近接する細胞が送る信号に影響されているからだ」。
アメリカ側の研究の筆頭筆者で、スタンフォード大学の遺伝学者クリストファー・ケーリン(Christopher Kaelin)は本誌にそう語る。
共同執筆者であるスタンフォード大学の遺伝学者、ケリー・マゴーワン(Kelly McGowan)に言わせれば、猫は特殊なケースで、研究対象として価値が大きい。
「犬や羊、牛、馬、ウサギなど、多くの家畜にオレンジ系の色をした種類が存在する。これは、2つの遺伝子のうち1つの変異によるものだ」と、マゴーワンは語る。
「こうした法則の興味深い例外が茶トラ猫で、変異が性別と結び付いている。茶トラ猫は、いわば遺伝学的ユニコーンだ」