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進化生物学

セックスでも子育てでも「メスの優位」こそが社会的調和の要因...サルから学ぶ「男女平等のメリット」

ANIMAL INSTINCTS

2025年2月27日(木)15時20分
ネイサン・レンツ(ニューヨーク市立大学教授・進化生物学)

進化生物学者ネイサン・レンツ

性行為は子孫を残すためだけでなく多様な性表現を認めるべきだと語るレンツ MICHAEL SAVITZKY

女性が強ければ社会は平和

彼らは安定したペアを形成せず、誰もが誰とでもセックスする。オスの体はメスより15%ほど大きく、メスは性器に膨らみがあるので容易に区別できる。

オスとメスでは行動も異なり、別々のグループを形成し、毛づくろいや餌の分配には序列があり、メスが上位に立つ。授乳期の子育てはメスの担当だが、やがて乳離れし、体も大きくなってくればオスが子育ての義務の大半を引き継ぐ。


オスとメスの見た目がほぼ同じで性的にも社会的にもモノガミーを堅持するドウイロティティと、一目でオスとメスの区別がつき性的に奔放なバーバリーマカク。およそ真逆な存在と思えるが、実は一般的な霊長類とは異なる重大な共通点がある。

まず、どちらもオスが子育てに献身的に参加している。そしてどちらの種でもメスが高度な自立性を持ち、交尾の相手を選ぶ側にある。

たいていの哺乳類ではオスが支配的・攻撃的で、セックスを強要する側にあり、メスは耐える側だ。しかしこの2種では、社会的にはメスのほうが強い力を持っている。

いささか美化した言い方になるが、どちらの種もオス・メス平等を旨としており、だからこそ平和的に暮らせるのではないか。

ドウイロティティの作る集団は核家族で、バーバリーマカクの集団は大規模な混合家族だが、共に全員が仲良く協力し合っていて、性的な争い事はほとんどない。モノガミーでも多夫多妻でも両性の平和共存は可能ということだ。

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